※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=布施鋼治)
昨年は中止された関東高校大会が6月5~6日、神奈川・逗子アリーナで、声を出しての応援に注意を呼びかけるなど(3回目は大声によるアナウンスで、具体的に学校名も出していた)、徹底したコロナ対策を打ち出した中で行なわれた。
中でも、男子フリースタイル60㎏級は強豪揃いの激戦区。大本命不在の中、頂きを極めたのは今年3月の全国高校選抜大会2位の五味虹登(ごみ・こうと=山梨・甲府城西)だった。
「この階級は強い選手が固まっていた。勝ち上がっていくのが大変でした」
五味は初戦で日比谷聡(群馬・館林)を10-0のテクニカルフォールで破ると、準々決勝では小山内葵生(埼玉・埼玉栄)を15-10という点取り合戦の末に撃破。続く準決勝では佐藤大夢(千葉・日体大柏)を8-2で破って決勝に進出した。
もう一方のブロックから勝ち上がってきたのは、全国少年少女選手権で5連覇の実績を誇る菅野煌大(東京・帝京高/JOCエリートアカデミー)。五味は第1ピリオド、果敢に一本背負いで攻め込んでからバックを取ったり、ローリングを決めたりで5点を奪う。
第2ピリオドになると、菅野に一度は5-4と1点差まで追い上げられ、逆転は時間の問題か、と思われたが、ここから五味は本領を発揮。デンジャーポジションへ追い込んでポイントを奪い返す。終わってみれば9-6のスコアで、粘る菅野を下した。
「菅野選手と闘ったのは今回が初めて。自分の思い通りの展開にはならなかったけど、とりあえず勝ててよかった」
五味は山梨ジュニア・クラブ出身。7歳から、「父の友人の誘い」がきっかけでシングレットを着始めた(関連記事)。
「レスリングの魅力? 努力すれば勝てることですかね」
同クラブは30年以上の歴史を誇る山梨県の名門キッズ・クラブ。これまでにも、深澤コーチの子息である3兄弟の存在がクローズアップされているが、五味も3兄弟。育英大に進学した姉・音々(ねおん)は今年4月のジュニア・クイーンズカップ53kg級で2位に輝いた。「下は小学5年生で、地元でレスリングをやっています。僕はいま、高校3年生。大学に進学する予定ですが、レスリングを続けたい」
次の大きな大会はインターハイ(8月21~24日、福井県)。今回の優勝を糧に、栄光へ向かって虹のように駆け登れ。