※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治、撮影=保高幸子)
「最終試合の始まりは予定より20分ばかり早かった。選手の規範的な行動に助けられた大会初日だったと思います」
風間杯全国選抜大会・第1日(10月9日)終了後、新型コロナウィルスの感染防止を念頭に大会を仕切った全国高体連レスリング専門部の原喜彦副理事長(新潟・県央工高教)は満足げにそう振り返った。
「我々の指導より、出場校の監督たちの指導の方が行き届いていたと思う。ほぼ完璧。最初の計量の入場時、ちょっと我々の手際が悪くて、列を作らせてしまい申し訳なかったけど、その計量も無事に終わりました」
原副理事長はサブアリーナに設けられたウォームアップ場が密にならないことに目を光らせていたが、その心配は杞憂に終わった。「各チームとも自分たちに割り当てられたローテーションをしっかり守ってくれました」
密を避けるための努力は随所に見られ、実行されていた。例えば開会式は1回戦に出場するチームだけが4マットに並んだ。「そうすることで、開会式の時間を短縮させることもできました。当初はちょうど8分の予定だったけど、時間通りの進行でした。試合以外、濃厚接触はなかったと思います」
無観客での大会。試合場では、試合が終わったらマットの消毒を行い、次に出場するチームの最終ウォームアップがあり、試合に移るというスケジュール。試合でレフェリーはフェイスシールドを着用していた。試合が終わると、通常は両選手の手首をつかみ勝者の手を挙げる。今回はコロナ対策で、勝者の方にレフェリーが手を挙げるという措置がとられた。
選手と相手セコンドとの握手もなく、一礼であいさつ。新型コロナウィルスの影響もあってか、最終的に欠場チームは3チームあったが、大きな混乱はなかった。
「3年生の進路の問題などで出場しないチームもありました。個人対抗戦も含めると、57名の欠場者がいました」
会場となった新潟市東総合スポーツセンターは、全国高校選抜大会では初めて使用する会場。見やすくするためのマットステージはない。そうなると、セコンドやマットサイドで待機している選手は、どうしても立ち上がって見てしまいがち。その点を原副理事長は2日目以降の課題とした。
「どうしても(うしろの人たちは)見えにくくなってしまう。なので、『とにかくセコンドやベンチの選手は座ってください』という指示を出していました。我々役員も観戦の時は座る。立ち見はしない。そういうふうにして大会進行をしていければと思っています。もうひとつは無駄なアナウンスはしないということを心がけました。実際には何回か無駄なアナウンスがあったと思うので、この点については反省が必要かなと」
コロナ禍の中、何もかも初めて尽くしの大会だったが、原副理事長が指摘するように“ほぼ完璧”な進行だったのではないか。