※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
風間杯全国高校選抜大会を開催することになり、新型コロナウィルスで沈んでいた日本レスリング界に復活の道筋をつけた新潟県。大会開催もさることながら、マットの上で輝いてこそ、高校レスリング発祥県の意地と言えよう。9月22日、三条市にある県央工高に、学校対抗戦に出場する八海高と北越高が合流。3校での合同練習が行われ、県全体のレベルアップをはかった。
同県は高体連レスリング専門部の原喜彦副理事長(県央工高教=1988年ソウル・1992年バルセロナ両大会代表)をはじめ、オリンピック選手をのべ14人輩出したレスリングの古豪県。原副理事長のあとにも2人の世界選手権代表を輩出。キッズクラブが県内に2つしかない時期もあったが、現在は6チームへ。しかも5チームは専用道場を持つなど環境もよくなり、伝統復活を目指している。
県の王者として学校対抗戦に出場する八海高は、2013年創部と歴史は浅いものの、個人戦で9人が出場するなど、今や新潟県の顔。昨年大会の学校対抗戦で悲願の1勝を挙げ、今年はその勢いをもってさらに上位を目指す。
だが、どのチームも同じだが、新型コロナウィルスの蔓延で春は活動が停止した。新潟県は感染者数が比較的少なかったが、学校が閉鎖されたため練習は思うようにいかず、手探り状態での全国挑戦となる。関川博紀監督(2001年世界選手権代表)は「3月から5月の約3ヶ月間は、自主トレという形でしか練習できなかった」と振り返る。
6月に学校が始まったが、当初は部活動としては練習できず、組み合う練習ができたのはさらに1ヶ月近くあと。この間にインターハイ、全国高校生グレコローマン選手権、国体と中止が決まり、「3年生のモチベーションは下がりましたね。気持ちが進路のことに移ってしまいました」と言う。
全国高校選抜大会が10月に開催されることが決まったものの、3年生の中には家庭の事情で参加できない選手もいて、「飛車角落ちで臨むことになります」と言う。例年なら北信越の高校や関東の高校・大学などの練習に参加させてもらい、強豪チームとの練習の中で実力を試してきたが、それができなかった不安材料もある。
それでも、「1年生から3年生まで14人の部員、全員で闘う、という気持ちです。来年につなげるためにも、ぜひ頑張りたい」と力をこめる。勝ち上がれば準々決勝で日体大柏高(千葉)と当たる組み合わせ。「力を出し切れば、最低でもそこまでは行けると思います」と気を引き締めた。
個人戦の65kg級に出場する山賀秀は「(3月の)選抜とインターハイがなくなり、何のために練習しているのかな、今年は試合をやらずに終わりかな、と思いました」と、5~6月頃の気持ちを振り返る。
今は、「県協会の人が頑張ってくれて大会が開催されることになり、とてもありがたいです。結果はともかく、八海高校でやってきた3年間の集大成を出したい」と持ち直した。
大会に向けて他県での練習はできず、この日のような県内チームとの合同練習も多くはこなせなかったが、自主トレであってもしっかり練習を積んできたという自負はある。「筋トレ中心の練習であっても、それはそれで力がついて、実力アップにつながっていると思う」と言う。
同県では7月下旬に県総体の代替大会が実施され、県内の選手が相手だが試合はこなすことができた。それもできなかった県も多く、その点ではいくらかのアドバンテージがある。
「学校対抗戦はベストメンバーにはなりませんが、2年生が頑張っている。その勢いをもって頑張りたい。団体でも個人でも表彰台が目標。出られない選手も含め、新潟県勢、全員で闘う、という気持ちで臨みたい」と話し、3年生として最初で最後の全国大会へ臨む意気込みを話した。