※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
中国・西安で行われている2019年アジア選手権に出場した男子フリースタイル・チームが4月24日、成田空港着の日本航空で帰国した。「銀1・銅3」という成績。オリンピック階級に限ると「銅1」。来年のアジア予選での出場枠が「2」であることを考えると(注=今年9月の世界選手権で出場枠を取った国は出場しない)、厳しい現実に直面したと言える。
井上謙二監督(自衛隊=男子フリースタイル強化委員長)は「厳しい結果だった。1ヶ月前のワールドカップ(ロシア)で、そこそこの手応えは感じたが、甘かった」と振り返り、団体戦と個人戦の違いやアジアのレベルの高さを痛感した様子。攻める前の動きや、最後まで攻め切ることがしっかりできていないことを反省材料として挙げた。
オリンピック階級で唯一メダルを取れた57kg級にしても、モンゴル(アジア大会優勝)とカザフスタン(世界選手権2位)は一番手が出ていない。アジア予選ではさらに厳しい闘いを予想した。
この後は、6月の明治杯全日本選抜選手権と7月のプレーオフを経て世界選手権の代表が決まる。「しっかり立て直したい。けがで結果を出せなかった選手もいる。しっかり治してほしい。世界選手権の代表が決まってから、代表をいっそう強化し、世界選手権につなげたい」と話した。
57kg級で銅メダルを取った高橋侑希(ALSOK)は「現地で、西口(茂樹)本部長から『惨敗』と言われた。その通りだけど、落ちたら這い上がるだけ。気を落とさずに這い上がっていこう、という気持ち」と、選手全員の気持ちを代弁。
自らは昨年のアジア大会で敗れたカン・クムソン(北朝鮮)にまたも敗れ、決勝進出を逃した。「(相手の闘いを)分かってはいたけど、ペースにのまれた。そう大きな実力差はない。まだ時間はあるので、細かな部分の対策を積んでいけば勝てる相手だと思う」と振り返った。
ただし、優勝はカン・クムソンではなく、アジア大会3位のレザ・アトリナガルチ(イラン)。「何度か闘っている選手。アジアのレベルは高い」と分析しつつ、「この中を勝てなければ、世界でも勝てない」と話し、いっそう気が引き締まった様子だ。
世界での闘いの前に、全日本選抜選手権で国内予選を勝ち抜かねばならない。若手の成長のほか、階級を変える選手もいて、国内でも過酷な闘いに直面するが、「今回以上に、限界まで追い込んで練習したい。今回はそうした練習をやってこられた。この経験を生かしたい。暑さの中での減量も、今回経験できました。西安は暑かったです」と話し、日本代表奪取を見据えた。
シニア初の国際大会(個人戦)で銀メダルを取った70kg級の志賀晃次郞(拓大)は「抽選を見て、決勝までは行けるかな、と思い、決勝が勝負と思った。金メダルを取れると思ったので悔しい」と言う。敗因は「足は触れても、そこからの処理が遅くて取り切れないうちに返されたりしたこと」と言う。「取れる」と思ったシーンになっても取り切れず、「日本にはないことですね」と言う。
ただ、初めてのシニアの国際大会でメダルを取れたことは「今後の自信になります。手応えは感じました」と言う。今年は世界選手権出場を目指すため、全日本選抜選手権でもオリンピック階級への移動は行わず、70kg級に出場の予定。「自分の階級は70kg級。無理に増やしたり、減らしたりせず、自分の階級で結果を出すことが先」と話し、2024年パリ・オリンピック出場を確実なものにするため、70kg級で結果を出すことを目指す。