※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 全日本学生選手権に続く優勝の65kg級・米澤圭(早大)
秋田・秋田商高時代に全国高校選抜大会とインターハイで優勝。鳴り物入りで早大に入学。しかし、昨季は新人選手権での優勝はあるものの、全日本学生選手権3位、全日本大学選手権は初戦敗退と学生タイトルには手が届かなかった。
高校時代、高速タックルからローリングという展開を得意としていた米澤は、負けるたびに自分のレスリングを見つめ直した。「試合展開に重きを置くようになった。昔はひたすらタックルとアンクルホールドで攻めていましたが、ワンパターンだと相手にばれるし、自分もばててしまう。相手の攻めも、自分のものにしようと考えるようになった」。
場外際に攻められても体を入れ替えてバックに回るなど、相手の力を利用することもうまくなった。「だいぶ、力の出し入れができるようになった」と、自分のレスリングに手ごたえを感じている。
高校時代と全く違ったスタイルを確立できたのは、「多胡島さん(伸佳=全日本選抜選手権70kg級王者)など、早大は中量級の選手層が厚い」ことが要因。「スパーリングを積み重ねることで勝手に身についていきました」と、個性ある選手がそろう早大ならではの実力養成ができた。「秋田商では、ひたすらタックルで攻めるなど基礎を学び、大学で味付け。ちょうどいいと思っている」と振り返った。
決勝は速攻のフォール勝ち
■同世代の樋口黎(日体大)の活躍でモチベーションは急上昇
全日本学生選手権で優勝したとはいえ、強豪選手が軒並み欠場したり、階級を変えたりで不完全燃焼での優勝だった。「乙黒圭祐選手(山梨学院大)や伊藤和真選手(専大)らが棄権しての優勝だったので、今回優勝し、二冠をとって学生チャンピオンだと思えるかな」。
学生界の目標はひとまず達成した。これをステップに次は全日本での活躍を視野に入れる。「オリンピックで樋口黎選手(日体大)の活躍は刺激的だった。オリンピックは30歳近くになって行くものだと思っていた。本当に頑張ったら(もうすぐ)行けるのかなと思えるようになった。東京大会を本気で目指します」。樋口は一つ上の学年。同世代の活躍に米澤のモチベーションは急上昇だ。
立ちはだかるシニアのライバルは、全日本選抜王者の鴨居正和(自衛隊)であり、今回70kg級で優勝した藤波も全日本レベルの大会は65kg級に出場してくる可能性が高い。「まだシニアでは力が足りない。藤波には今年のJOC杯ではぼこぼこにされた。学生二冠に満足せず、全日本でも勝てるように練習を積みます」―。全日本の舞台で更に成長した姿を見せられるか。