2026.08.31NEW

【2026年全日本学生選手権・特集】かつての宿敵に快勝して3連覇、オリンピック王者超えを目指す西内悠人(日体大)

(文=布施鋼治)

 「(優勝できて)今はめちゃめちゃホッとしています」

 2026年全日本学生選手権最終日(8月23日)、男子フリースタイル65kg級で3連覇を達成した西内悠人(日体大)は、安堵の表情を浮かべていた。優勝したことだけが理由ではない。手負いの状態での出場だったにもかかわらず、頂点に立てたことに対してだ。

ちょっと(左)ひざのこともあって…。この大会にも出るか出ないか迷っていたくらいなので

▲ひざの負傷を乗り越えて3連覇を達成、文部科学大臣杯を受賞した西内悠人(日体大)

 出場を決意させたのは、現時点で全日本選手権への出場権を持っていないことだった。「どこかで権利をとっておかないといけないと思った

 ひざのコンディションについて、西内は詳細な言及を避けたが、その口ぶりからして100%のコンディションでないことは確かだった。今年になってからの西内は、とことんついていない。今年5月の全日本選抜選手権のときには蜂窩織炎(ほうかしきえん)にかかり、欠場を余儀なくされた。今回のけがもその蜂窩織炎が関係していたという。

 「筋肉が落ちたときに、筋肉でカバーできないところをやっちゃった感じです」

▲6試合で唯一の失点は準決勝の佐藤秀磨(青=青山学院大)戦。タックルの防御を誤り、2点を奪われた

2026年を“呪われた年”にしたくなかった

 昨年12月の全日本選手権では準々決勝で荻野海志(当時山梨学院大)に3-7で敗北を喫した。

 「それから(部内で)不祥事があって、3月のU23全日本選手権には出られなかった。明治杯はようやく出られる個人戦だと思っていたら、(けがで)出られなくなってしまった。リーグ戦もけがをしたまま出たけど、(チームとして)勝てなくて…。本当に呪われているんじゃないかと思いました」

 2026年をこのまま“呪われた年”にしないためには、ここでネガティブな流れを払拭しないといけない。西内はそう決意してマットに上がった。「もうやるしかない、という感じでした。点数的には初戦の動きが悪かったり、自分からタックルになかなか入っていけないなど課題はいっぱいあるんですけど、ひざのことを考えたら、それなりの点数はつけられるんじゃないかと思います」

▲決勝(写真)を含めて6試合をテクニカルスペリオリティで勝ち抜き、優勝を決めた

 決勝で対峙したのは、かつての宿敵・須田宝(山梨学院大)。「中学のときには、全国大会の決勝で2連覇がかかっていたのに負けてしまった。高校へ進んで、高校選抜で負けたけど、インターハイと国体で取り返した。彼はラスボス(ゲームや物語で最後に出てくる最も強い敵)というか、最後に自分の前に立ちはだかってくる。大学に入ってからは階級が違っていたのでずっと当たらなかったけど、今回決勝で当たったというのは何か運命的なものを感じますね」

 かつてのライバルを相手に、西内はテクニカルスペリオリティになるほどポイント差のあるスコアで決着をつけた。勝因は何だったのか?

 「今まではこういう技をかけたら映(ば)えるとか、強い集中力を見せたいと思っていた。もっと泥臭くてもいいから、もっと勝ちに執着する、そういう気持ちが僕には足りていなかったと思う。こっちが1点取ろうと、9点取ろうと、逆に相手にリードを許しても、点数を気にせずどんどん攻める。そういう部分が今までの自分より成長できていたんじゃないかと思います」

▲2019年沼尻直杯全国中学生選手権決勝、西内悠人(青=当時高知・高知南中)は須田高(当時長崎・郡中)に敗れ、2連覇ならず=撮影・矢吹建夫

さすがに“プロ流パフォーマンス”はできず

 セコンドには高校、大学の先輩でありながら、同じ階級ということでマットに立てば当たる運命にある清岡幸大郎(カクシングループ)が就いていた。

 「決勝で勝った瞬間、『次はあなたです』と指を差そうと思ったけど、さすがにできませんでした(苦笑)。でも天皇杯へ向けて、ずっと清岡先輩との闘いを見据えています

▲セコンドは2人のパリ・オリンピック金メダリスト。全日本選手権は打倒・清岡幸大郎(左)に照準を絞る(写真は準決勝)

 昨年12月の全日本選手権では清岡との直接対決を意識するがあまり、その前に荻野に足元をすくわれてしまった。その反省を踏まえ、西内は意識改革にも着手する。

先のことは考えず、目の前の一戦で力を出し切る。とにかく今を生きる。そういう思いで取り組んでいきたい

 全日本選手権まで4ヶ月。西内はひざのけがを治し、万全の状態でパリ・オリンピック金メダリスト越えを狙う。