スロバキア・ブラティスラバで行われている2026年U20世界選手権に出場した男子グレコローマン・チームが8月21日、成田空港着のオーストリア航空で帰国した。87kg級の吉田泰造(日体大)が金メダルを持ち帰ったが、メダルはこの1個で、国別対抗得点は10位だった。
チームで唯一の金メダルを手にした吉田は、「U20グレコローマンで初の日本人チャンピオン」「日本グレコローマン最重量級の世界チャンピオン」の肩書もつく価値ある優勝。一昨年、昨年と82kg級に出場して銅メダルに終わっていたので、「3年目で優勝できてよかった」と安堵の表情を浮かべた。
U17でも世界王者になっており、目標とするグランドスラム(全世代での世界王者)を達成するには、U20で最後の年になる今年の優勝は絶対条件。「優勝しか考えていなかった」ときっぱり。
87kg級での初めての国際大会で、多少の不安はあったそうだが、闘ってみると、「実力がついたのか、身長の高い相手の方が押しやすいからかは分かりませんが、82kg級のときよりはリラックスして闘えた」そうだ。
決勝も開始からラッシュを仕掛け、「相手が強くても弱くても、やることは変わらない。自分からアクションを起こしていかないと勝てない」という気持ちのもとでの試合だった。スタミナ切れが心配されるような開始直後の猛攻撃だったが、「しっかり練習しています。(日体大の松本慎吾)監督にもまれています」とにっこり。
ただ、「通過点です」とも言い、頭の中は優勝の喜びより今後のことが充満。「U20での優勝で何言ってんだ、と言われるかもしれないけど」と前置きし、87kg級でも押しや組み手が通用したことを自信にしてアジア大会と世界選手権に挑む腹積もりだ。
グレコローマンの強豪国と言えばロシアとイランが挙げられるが、今大会では両国選手との対戦はなかった。「イランとロシアを破らないとね」との声に、「(強豪は)日本です。優勝しているんですよ。87kg級は日本です」ときっぱり。
両国選手が不出場ならともかく、出場していて、その選手を破った選手に勝って優勝しているのだから、その理論はもっとも。世界王者のプライドを前面に出し、秋の勝負へ向かう。
清水早伸監督(自衛隊)は「吉田は自分のレスリングを貫き通した。外国選手が圧倒され、試合の途中で心が折れたと思える場面もあった」と振り返る。フィジカルの強さのほか組み手が早く、軽量級と変わらないくらいのスピードに外国選手が対処できなかったそうだ。組まないときでもフェイントを入れて相手の動きを止め、首を落とすなどが効果的で、相手をどんどん押すことができ、勝利につなげたと分析した。
吉田以外は5位が最高で、目標としていた「メダル2個」には届かなかったのは反省材料。「狙える選手はいたのに、持ち帰れなかったのは残念です」と言う。
「最初にパッシブを取りに行く」「グラウンドのデフェンス」「場外際の攻防で判断をあやまらない」を注意事項として伝えていたが、こなし切れなかった。リフト、ローリングの防御で、腕の長い選手に深く組まれると対応できなくなることが目立ったようで、これまでと同じでデフェンスの強化が課題として続く。金メダルを取っても、克服すべき点は多い。
初参加の屋比久翔平コーチ(沖縄・北部農林高教)は「自分の強みを出せた選手が勝利につなげていた」と振り返る。自分のジュニア時代より「日本全体のレベルは確実に上がっています。自分の形を見つけてほしい。グラウンドの守りで、腕を深く入れてくる選手に対しての対処などを体で感じた選手もいたはず。ここから成長していってほしい」と望んだ。
いつもは沖縄で高校生の指導をしている。世界のトップレベルをレスリングを再確認できたことは、いい経験。「世界のレベルがどんどん上がっている。地方の選手にも伝えたい」と話した。