2026.07.15NEW

【特集】日体大で鍛え、日本文理大を支えた指揮官を迎えた宮崎日大高、古豪復活を目指す(上)

 東日本学生リーグ戦で23年ぶりの優勝を達成した日大は、学生総数7万4,000人という国内最大規模のマンモス大学。附属高校は26校あり、北海道から九州に散らばっている。レスリング部のある高校は4校。そのうちのひとつ、宮崎日大高校は、宮崎県のレスリング発祥高校のひとつ。県高校総体レスリング競技がスタートした1966年の第1回大会に出場している。

 今年4月、前年度まで日本文理大を指揮していた比江島研吾氏(宮崎・宮崎工高~日体大OB)が監督に就任した。“学閥意識”が根強くあった時代なら、日体大のOBが大学レスリング界の雄を争う日大系列の高校で指導することはありえなかっただろうが、現在の指導者に大学間の垣根はない。

▲比江島研吾監督(後列左端)が就任し、新たな飛躍を目指す宮崎日大

 高校入学後にレスリングを始めた選手の指導が中心だが、「純粋に楽しいです」と話し、2017年以来のインターハイ学校対抗戦出場を目指している。

 今年のインターハイ県予選は、学校対抗戦3位、個人対抗戦は2位が3選手で、ともに選手を本戦に送ることはできなかった。だが、比江島体制は始まったばかり。来年のインターハイ、さらに同年9月に日南市で行われる国民スポーツ大会(日本のひなた宮崎国スポ)を目標に、熱い指導が期待される。

▲練習を見守る比江島研吾監督

教えた技術を身につけ、成長していく姿が頼もしい

 日本文理大では、コーチ時代を含めて8年間、大学選手を指導した。高校である程度のベースができている選手が相手なので、基本指導もさることながら応用技術の指導が中心だった。今は高校入学後にレスリングに取り組んだ選手が多く、「0からの指導」だ。

 選手としてある程度の実績を残し、大学生を教えた指導者が初心者の指導をするにあたって陥りやすいのが、「こう動くのが当たり前」という固定観念のもと、初心者に教えるべきことをスルーしてしまうことが挙げられる。崩しやフェイント(最近のレスリング界では「フェイク」と呼ぶことが多い)の概念もないのがビギナーであり、熟練者の感覚で指導してはならない。

 そうした困難を含めて、やりがいがあることに変わりはない。初心者が教えた技術を身につけ、1日ごとに成長していく姿が頼もしく感じるそうだ。大会でしっかり出してくれると、その気持ちはさらに高まる。

 比江島監督は「今はまだ、大学に出げいこに行くとかのレベルではありませんし、選手の意識もそこまでは行っていません。県内の高校との合同練習で力をつける段階です」と、着実な強化を目指す。全国でどの高校が強いとか、大学ではどこが強いとかに関心がいく手前の選手もいる。「興味を持ってもらうことでモチベーションにつながり、実力アップにつながると思います」と話し、まず意識づけを目指す。

 日本文理大時代に、大学で同期だった太田忍(2016年リオデジャネイロ・オリンピック銀メダリスト)を呼んで指導してもらったように、強豪選手を招待して技術指導を受けることは、条件さえ整えばすぐにでもできる。オリンピアンに接すれば意識も変わるはずなので、そうしたことも行い、少しずつレベルを上げていく腹積もり。

 「高校でレスリングができるのは2年数ヶ月です。その間に各選手の目標が達成できるよう、1日1日を全力で取り組みたいと思います」と力をこめた。

▲ときに厳しく選手を追い込む

中高の一貫指導体制、大体大浪商の躍進が手本

 宮崎日大高は、一貫校の宮崎日大中にもレスリング部があり、こちらも比江島監督が指導している。現在の部員は2人で、通常は高校と合同練習。中高の一貫指導といえば、最近では大体大浪商中高が脚光を浴びており、結果も出している。同監督も「6年計画でチームを強くしたい、という気持ちがあります。それができる環境が、ここにはあります」と、長期計画にもとづく強化を口にする。

 それであっても、中学や高校に入学してからレスリングを始める選手を増やし、部員を増やしていかねばならない。部員集めは、レスリング経験者が自分の子や親戚、知り合いの子に勧めるなどして入ってくるケースが多いので、口コミによる勧誘になる。そのため、親になってもレスリングに関心をもってくれるよう、県全体のレスリング熱を高めて意識をもたせる努力も必要だ。

 宮崎県は温暖な気候のもとでプロ野球やJリーグなどのキャンプ地も多く、野球やサッカー、ゴルフ、サーフィンなどが盛ん。宮崎日大高校で言えば、バレーボールも強く、実に46の運動部が存在。生徒の“取り合い”になってしまう一面もあるそうだ。しかし、宮崎県高体連のレスリング登録者数は、一昨年まで全国一をキープ(昨年は千葉県が1位=クリック)。キッズクラブは6つあり、ベースもあるので、飛躍の可能性は十分にある。

▲レスリング場の壁には栄光の軌跡がずらり

「優勝が近いと思っています」…前OB会長の西村盛正・南九州大顧問

 取材日には、部の第3期生で南九州大にレスリング部を創部して支えてきた日大卒の西村盛正さん(現同部顧問)が姿を見せた。車で15分のところに住み、前任の長倉保美監督の時代はOB会の会長として母校を支えた。南九州大の部長を竹田展大監督にバトンタッチし、悠々自適の生活に入ったが、日大が東日本学生リーグ戦で23年ぶりの優勝を遂げ、「祝勝会で東京まで行かなきゃね」と、レスリングへの思いが消えることはない。

 母校の今夏のインターハイ出場はならなかったものの、「比江島監督が就任したから、優勝が近いと思っているんですよ」ときっぱり。30代前半で重量級の選手にも負けないだけのスパーリングができる指導者の加入は大きいと考えており、「絶対に(チーム全体の)実力はアップします」と断言した。

▲OB会の前会長として母校の発展に尽力してきた西村盛正さん。技術指導も行う

 西村さんは、1976年のモントリオール・オリンピックを目指して全日本選手権3位などの実績を持つ。夢はならなかったが、1979年に宮崎・日南市で行われた国民体育大会を目指して選手生活を続け、全日本社会人選手権5度優勝の実績。1995年には世界ベテランズ選手権優勝を加えた。地元国体を機に宮崎県のレスリングが力を伸ばしたことを経験しているので、来年に迫った国民スポーツ大会は大きなきっかけになることを期待している。

 「強くなる選手は自分から率先して練習し、分からないことがあれば監督に聞きに行く。やらされる選手は、伸びない」という不変の真理を口にし、後輩たちにエールを送った。

▲レスリング場の窓からは田園風景。反対側は住宅街だが、昔はそれもなく、練習から逃げ出してもすぐに見つかったとか

《続く》