けがで今年のリーグ戦に出場できず、後方からの支援となった掛川零恩主将は「リーグ戦で負け越した選手はいない。みんな頑張ってくれたと」と下級生の奮戦をねぎらう。このメンバーがそのまま来年の戦力でもあるので、来年への期待は大きい。
けがの具合からしてマットを去ることになり、やや燃え切れない選手生活を余儀なくされたが、早大を選んだ選択に悔いはない。「他の大学に比べると、絶対に民主主義の度合いが大きいと思います」と振り返る。1年生のときから練習や技術について思ったことを言えたし、今も言わせている。1年生が弱点克服に悩んでいると、チーム全員が意見を出して試行錯誤を繰り返させ、壁を乗り越えることに協力する。
「部員が少ないからこそ、できることだと思います」。同主将が高校時代に全国王者なしの状況から、全日本学生選手権優勝、U23全日本選手権優勝、全日本選手権2位などの成績を残せたのは、下級生の頃にそのやり方で上級生に助けられたからだと言う。
「早大ブランド」に加え、「考えることのできるスポーツ選手」は企業から引っ張りだこ。すでに来春の就職もIT関連の大手企業に決まり、闘いの舞台をマットから実社会に変えて頑張り、早大の100周年記念Vを応援する予定だ。
全日本選抜選手権優勝に加え、リーグ戦で5戦全勝の金澤空大は「全試合出ることは最初から分かっていた。勝つだけでなく、チームの勢いがつくような闘いが必要と思っていた」と自覚十分で臨んだリーグ戦。全勝をマークして「役目を果たせたと思う」と振り返る。
来年、新人が入ってきても、部員が爆発的に増えることはありえないので、小人数での闘いになるが、「今年のメンバーが全員残る。しっかり準備して闘いたい」と気合を入れる。
高校レスリング界の強豪、千葉・日体大柏高の出身。高校入学直後は軽量級の先輩にも勝てなかったというが、最終学年には全国高校生グレコローマン選手権と国民体育大会(現国民スポーツ大会)で優勝するまでに力をつけた。強豪の中でもまれ、がむしゃらに練習して強くなったと思っている。
大学では「自分で考え、いろんな技を工夫して成長し、強いチームの選手を倒したい、という気持ちがありました」と言う。それを実現させてくれそうな大学という評判が早大で、進学を決めた。
中には「早大で強くなれるの?」「練習相手はいるの?」と声をかけてくる人もいたようだが、「今日の練習を見てくれれば分かりますでしょ。同期にアジア・チャンピオン(ガレダキ敬一)がいる。坂本輪選手(現アイオワ州立大=昨年の世界選手権57kg級代表)ほか、他チームの強豪が頻繁に参加してくれますし、練習環境は申し分ないです」と自信を持つ。それを実証し、高校生のあこがれの進路にするためにも、世界選手権での健闘を誓った。
アジア王者になってチームを勢いづけたガレダギ敬一は、高校(JOCエリートアカデミー)時代にいろんな大学の練習に参加。多くの選択肢がある中、「一番伸び伸びできる環境だと思った」として早大を選んだ。選手の自主性を尊重する雰囲気があり、「やらなかったら弱くなるだけ」というマイナスはあるが、縛られるような練習は合わないとの思いが、早大を選ばせた。
結果としてアジア王者に輝くまでに力を伸ばしたのだから、その選択は正しかったと言える。「世界選手権では最低でも入賞はしたい。後輩に頑張るところを見せることで、チームを盛り立てたい」として、現在のメンバーがそのまま残る来年のリーグ戦へ向かう。
ガレダキと同じJOCエリートアカデミー~早大を歩んだ梅林太朗コーチは、早大の魅力を「日本で最も歴史があること」「文武両道」のほか、学生主体で練習メニューを考えさせることを挙げる。自分達で決めたことを自分達がしっかり守る早大カラーに「プライドを持っています」と言う。「自分が指揮をとることはしていません。アドバイスをしても、選手自身に向かっていくところを決めさせます」と話す。一方で、「負けたときは自分の責任」ときっぱり。
自身がコーチになってから入学したのが、ガレダギ敬一と金澤空大。その2人が世界選手権に出場することで、指導の方向性に自信を持つ。「2人の背中を見て育つ選手が出てほしい」と、相乗効果による今後の飛躍を期待する。
100周年まで、あと5年。あっという間にやってくるだろう。計画をもって強化すれば、大学王者に返り咲くベースはできている。岡田監督は「現在の高校2年生が大学4年生になったときが100周年。伝統を再興してくれる選手を求めます」と、日本最古のチームの一員として栄光を目指す選手を募集している。
2021年東京オリンピックで須﨑優衣(現キッツ)が優勝し、早大の学生選手としては1936年ベルリン大会の杉浦重雄(水泳=リレー)以来の夏季大会の金メダルを獲得した(注=冬季大会は 荻原健司、羽生結弦がいる)。女子では初。日本レスリング界と早大スポーツの歴史をつくったチームが、創部100周年を機に再飛躍を目指す。
《完》