2026.06.15NEW

【2026年東日本学生リーグ戦・展望】「二部に落ちる可能性もある。その可能性を消すためにはベストを尽くす」…拓大・高谷惣亮監督

お知らせ
PIN FALLに2026年東日本学生リーグ戦へ向けての写真等が掲載されています。

 

(文・撮影=保高幸子)

 6月8日、リーグ戦を10日後に控えた拓大レスリング部は、自主的に大麻検査を実施した。一昨年に始め、今回が4回目だという。拓大ではレスリング部とボクシング部が実施している自主検査。今回の検査では大麻だけでなくゾンビタバコ(エトミデート)、そしてニコチンを検出できる尿検査で、検体の温度も検知できるため、すり替えがあった場合にはすぐに判明し、再検査となる。

チームが選手に数字を割り振り、それぞれが検体容器に数字を記入。監督は番号と選手名の相対表を管理し、検査する側には番号のみがわかるためプライバシーが守られるしくみ。

▲線が全部 6本出ていたら陰性。レスリング部員からは陽性反応はなかった。検査会社が説明用に用意したサンプルではニコチンに陽性反応が出ている

 今回、レスリング部の学生から採取したものはどの検体も陰性で、すり替えなどもなかった。高谷惣亮監督は「ウチの学生は真面目です」と自信を持って話す。

 大麻などが検出される目安としては、常習者であればおよそ1週間とのこと。そのため、検査は4日前に知らせるほぼ抜き打ちの形で実施。検査キットを提供するホンダエンタープライズの本田通靖社長は「陽性者を見つけることが目的ではなく、検査が禁止物質使用の抑止力になることが重要」と意義を説明。また「検査を継続していれば、もし部員が被疑にかけられたとしても、部としては指導も対策をしていたことの証明になり、連帯責任は避けられるのではないか」とも。

 高谷監督は「もし陽性が出たらどうするんだ、と自主検査をしない部もありますが、クリーンであることを証明できるいい機会」とこれからも継続していくつもりだ。

▲2009年以来のリーグ戦優勝を目指す拓大

勝ち負けではなくプロセスに価値がある

 クリーンな部をあらためて証明した高谷監督に、リーグ戦へ向けての意気込みを尋ねると、少し考え、「(就任5年目の)今年の学生の大会のどこかで優勝を目指し、ここ数年、チーム作りはしてきました。優勝ってそんなに甘いもんじゃないなと痛感しています」と厳しい表情。

 優勝を目指していくのは当然ながら、学生には「勝ち負けじゃなく、どれだけそこに向けて準備できてきたかだ」と、プロセスの評価を重視している。かなり厳しく指導をしてきた自覚はあり、「意識も成果も変わってきて、いい雰囲気になってきた」とうなずく。

 最初からタイトルを持って大学に上がったような選手たちには「自主性を持って練習しろ」という指導ができるが、「それができない選手もいるし、チャンピオンで入ってくる選手がいないウチのような部は、指導者としてうるさく言わないといけない」のが現状だ。

 指導は「将来的にオリンピックを目指していくのか、きちんとした社会人になっていくのか、などで違う」と言う一方、「最終的には、人間として成長するため」と、マット外での成長を見守りながらやっている。

▲就任5年目を迎えた高谷惣亮監督。優勝が視野に入ってきたか?

 オリンピック・レベルの選手が1人いたら、みんなそこに引っ張られていくが、現状はそうではない。だが「大学でレスリングを 4年間、なんとなくやるような、そんないい加減な選手はいない」ときっぱり。必要なのは意識改革。「高校で成績残せなかった子たちとか、チャンピオンに勝てなかった子たちを何とか勝たせたい」という強い思いがあり、厳しい指導で大学の4年間で強くなるための練習をやっている。

「全敗もありえると思ってます。全勝もありえるし、全敗もありえる」

 「リーグ戦は、僕自身もすごい楽しみにはしてるんですけど、優勝を目指しますとか、そういうことではないです」。7vs7の団体戦。チームの勝利に必要な4勝は「層が相当厚くないと難しい。ウチも強い選手は複数いるけど、あのチーム相手なら必ず4勝できる、と自信を持って言える状態ではない」。

 チームの柱は、キャプテンで昨年のU23世界選手権銀メダリストの菊地優太(57kg級)。「菊地が負けたら、ウチは負ける。菊地にはプレッシャーかかりますが、それを力に変えて踏ん張ってほしいです」と期待する。

▲主将としての活躍が期待される菊地優太

 ここ数年はメンバー不足だった。部員数が増え、今年は作戦を練ることもできるようになった。他にコーチがおらず1人で練習を見ているため、「選手の性格とかも見ながら戦術を練り、ぶつけていきたい」と苦労はあれど、選手のことはしっかり分かっている自負があることは伝わってくる。

 練習の最後には、熱い言葉で選手たちを鼓舞した。「どういう選手が応援されるか、分かるか? 頑張っているやつを見たら、応援したくなる。簡単なことだ」と、勝ち負けだけではないことを強調。一生懸命頑張ってる人間に対して冷笑するようでは、レスリングのような競技で勝つことはできない。

 「二部に落ちる可能性もある。その可能性を消すためにはベストを尽くす。ベスト出してレスリングをしてくれたら、全勝できる」とも続けた。

▲グレコローマンの選手だが、活躍が期待される4年生の屶網剣勝(65kg級)

▲アジア選手権出場を果たした2年生の本橋矢大(86kg級)

「石黒隼士が高谷惣亮に勝ちました」の方が面白い!

 リーグ戦に向けては「選手たちはすっごくワクワクしています。やっぱり、リーグ戦は異質。応援の熱気もそうですし、出場するとなれば全員が注目している中で舞台に立つ。全員が主人公になるような場所」と言う。この環境で闘えるのは、またとない機会。新入生にとって、チームで闘うことは今後のチーム運営のプラスにもなる。「登録メンバーは全員出場してもらう予定でいます」と、全員で闘い、ベストを尽くす。

 「高谷惣亮が12連覇しました、これじゃ面白くない。石黒隼士が高谷惣亮に勝ちました、こっちの方が面白い。そういうことを、お前らが起こしてほしい」と自らをも引き合いに出し、下剋上を期待する。

 リーグ戦へ向けてのムードを、その先へつなげることができるか。「拓大がどんな闘いをするか、見ていてください」と力強く言い切った。

▲JOCジュニアオリンピックU20-97kg級を制した片松龍城(2年)