(文・撮影=布施鋼治)
6月8日、三恵海運レスリング班の選手たちが大阪体育大に“出張訪問”し、中高大の一貫チームで知られる同校の選手たちと汗を流した。
参加者は、先月の全日本選抜選手権・男子フリースタイル97kg級で2連覇を達成した吉田アラシ、昨年の天皇杯全日本選手権・男子フリースタイル61kg級優勝の長谷川敏裕、全日本選抜選手権・男子フリースタイル86kg級3位の高橋夢大、昨年の全日本社会人オープン選手権男子フリースタイル97kg級優勝の吉田ケイワン。そして白石俊次統括、藤本健太監督、吉田アミン・コーチの総勢7名。
今回の三恵海運の“出張訪問”は、大体大にとっても大きな出来事だった。というのも、その話を聞きつけ、神﨑浩学長が初めてレスリング道場に顔を見せたからだ。
「レスリングは全くの素人」と前置きしながら、神﨑学長は「やっぱり一流の選手の技術は細かいという印象を受けました。わが校の生徒たちがすぐにできるかどうかは別にして、『ああ、こんな技術があるんだ』と思うだけでもいい勉強になったと思う」と話す。
大体大付属浪商高校の選手たちは、前日のインターハイ大阪予選の学校対抗戦で優勝したばかりで、個人戦でも全階級で優勝する離れ業を演じた。激戦を終えたばかりだったが、疲れも見せず三恵海運の選手たちに打ち込みやスパーリングを挑んでいった。
中でも吉田アラシや吉田ケイワンの重量級選手に、高校3年生ながら先の全日本選抜選手権・男子フリースタイル125kg級で5位に入賞した長谷川大和が挑んだスパーリングは、実に見ごたえがあった。
吉田アラシは「この間の全日本合宿でも練習したけど、強い。プレッシャーもかけてくるし、ガッツもある。でも全日本合宿のときと比べたら、今日の方が強かった。『オオッ!?』と思う場面もありました。やっぱりホームだからですかね(微笑)」と話す。
「この前の明治杯では自分の階級に長谷川君もいた。結果的に当たらなかったけど、彼は優勝した山本泰輝(自衛隊)選手を相手に1-2だったので、自分的にもいろいろ収穫がありました。今回は指導で来ていたけど、自分の勉強にもなりました」(ケイワン)
胸を貸す立場ながら、今も選手としてマットに上がる吉田アミン・コーチも「収穫があった」と声を弾ませた。「自分は手足が長い選手が苦手。今回はそういう選手にタックルに入って、その後の処理の課題が見えた」
京都・網野高(現丹後緑風高)出身の髙橋夢大は高校時代から何度も大阪体育大に足を運んでいると言う。「何回来ているか分からない。社会人になってからも4~5回来ていると思う」
なぜ足繁く通っているかといえば、所属の三恵海運の髙田肇相談役の母校であることが大きい。さらにいえば、大体大で指導することで同高の選手を強化し、西日本全体の底上げにもつながるからだろう。
「自分がちびっ子のとき、当時のトップの人が教えてくれたおかげでいまの自分がいると思っている。自分も下の世代に還元できるように頑張りたい」(髙橋)
練習を熱心に見ていた白石俊次統括は「(大学生だけではなく)高校生や中学生にとってもいい練習になったと思う」と目を細めた。
「この間、浪商の高校生が明治杯に2人も出ていたけど、どちらもいい動きをしていましたね。将来が楽しみです。この中から将来のオリンピアンが出てほしい」
今後も三恵海運の選手が大体大で指導する機会は何度もあるはず。とはいえ、この“出張訪問”は大体大に限った話ではない。藤本監督は「依頼を受ければ、全国どこにでも行きたい」と前向きだ。
「今年2月には、富山県レスリング協会から呼んでいただきました。現役を終えたら、指導者になる選手もいるでしょう。出張訪問で指導することは将来に必ず役立つ。そういう意味でも、どんどん続けていきたいですね」。
社会人チームの新たな試み。次はどこに“出没”するのか。