(文=布施鋼治)
2026年明治杯全日本選抜選手権の女子65kg級は、全日本チャンピオンであり4月のアジア選手権2位の池畑菜々(育英大)が制した。決勝は同門で同期の元木日陽里との対戦。エントリー表を見るまで、この階級で元木が闘うことは知らなかったと言う。
「正直なことを言うと、やりたくなかった」
しかし、いざマットに上がれば、一切の私情を捨てなければ勝者にはなれない。中盤までは一進一退の攻防が続いたが、第2ピリオドになると元木をどんどん突き放し、終わってみれば9-2で退けた。
「このインタビューが終わったら、芦屋学園高の恩師の坂本(涼子)先生にすぐ電話します。結構会えていないんですけど、兵庫県に帰省したら飛びつきます(微笑)」
今大会の勝因は何だったのか。「昔の自分だったら、失点してしまった瞬間に崩れちゃったりしていました。でも最近は、点を取られても粘ることができるようになってきた。(リードされていることに)免疫がついたわけではないけど、(焦ることなく)自分から攻める気持ちを持ち続けることができているかな、と思います。負けても行く、取られても行く。そういう気持ちが以前より出ていたかなと」
池畑が口にする免疫とは、アジア選手権決勝での出来事を指す。一度は勝利を宣せられたが、相手陣営のチャレンジが認められて勝敗が覆り、優勝が準優勝に代わってしまった。池畑は「正直、トラウマになった」と振り返る。「試合が終わってから判定が覆ることがあるんだ、という驚きとショックが大きかった」
その一方で、初めてシニアのアジア選手権に出場できたということは自信にもつながったと言う。「あとは上がっていくだけだと思いました」
そうした海外でのまさかの経験は榎本美鈴(自衛隊)との準決勝でも十分に生きた。「相手はすごく経験豊富な選手で、作戦も上手なので、やりたくないと思った。自分がやることは合宿でよくやっているので、ばれていると思いました。でも、(4-3で競り勝ったので)成長できているのかなと思います」
昨年12月の全日本選手権も制しているので、プレーオフなしで世界選手権の出場切符を手にした。シニアのアジア選手権出場という目標を達成した現在、次なる目標はシニアの世界選手権出場だったので、ホップ、ステップで2つ目の目標をクリアした格好だ。
「育英大のオリンピック階級の選手は、アジア大会に向け追い込んでいます。チームの雰囲気とはちょっと違うけど、めちゃくちゃうれしいです。世界選手権では、絶対に金メダルを取れるように頑張りたい」
池畑が優勝した日、世界レスリング連盟(UWW)のウェブサイトでは、今年の世界選手権は当初予定されていたバーレーンでの開催を延期することが発表され、すぐに代替地としてカザブスタン・アスタナで、当初と同じ日程の10月24日~11月1日に行われることがアナウンスされた。
その世界選手権に向けての課題もはっきりしている。「わたしは練習していることをなかなか出せない。技術は他の選手に比べると頭ひとつ落ちるというか、これといった技を持っていない。だからいまの課題は、試合になっても自信を持って出せる技を身につけることだと思います」
来春には大学を卒業する予定だが、社会人になっても現役を続ける意向。育英大に残って練習できる環境が希望だ。母校での練習では、階級が石井亜海と元木咲良にはさまれている関係で、この2人とスパーリングする機会が多い。だったら強くならないわけがない。ホップ、ステップまで来たら、次はジャンプするしかない。