2026.05.21NEW

【特集】宿毛レスリング協会と宿毛高校が強力タッグ結成…レスリングを通じて、宿毛の発展を目指す新たな試み

 地方のレスリング・クラブに新たな試み─。5月15日、高知県立宿毛(すくも)高校で、宿毛市レスリング協会と同校の連携協定の発表記者会見が行われた。会見の冒頭で司会を務めた同校レスリング部の外部コーチで「すくもレスリングクラブ」の頼田匡平代表はこの協定の目的を解説した。

 「レスリング競技を通じ、生徒の健全育成、競技力向上、地域スポーツの振興、そして地域に根ざした魅力ある学校づくりを推進したい」

▲宿毛高校で行われた連携協定の発表記者会見

 宿毛市は高知県南西部にあり、愛媛県との県境に位置する人口約1万7,000人の地方都市。全国2位の生産量を誇る果物「土佐文旦(ぶんたん)」や、“魚のゆりかご”と称される宿毛湾で育った養殖魚の水揚げや加工が盛ん。

 筆者は、2024年パリ・オリンピック金メダリストで、地元四国で指導者としての第一歩を歩き始めた櫻井つぐみさんから「宿毛の鰹(かつお)はとくに美味しい」と耳にしていたが、実際現地で食べた鰹の塩たたきは絶品だった。

全盛期に800人いた生徒数が、現在は182人

 まだ観光地化されていない自然も豊富で、近隣の柏島(かしわじま)の海は「船が海に浮いている」と形容されるほど透き通ったエメラルドグリーン色だった。ここのビーチでは、砂浜に土俵を描く形で、櫻井さんがキッズレスラーたちと即興のビーチレスリングに励んだこともあるという。

 その近隣には「大水の時には水面下に沈む欄干のない橋」として知られる沈下橋もいくつかあり、映画やドラマのロケ地やモデルになった場所もある。都会の喧騒を離れ過ごしたい人にとっては、まさにうってつけの場所ということができるだろう。

▲クラブの子供たちは大自然と戯れながら成長している

 その一方で、他の地方都市同様、近年は少子化のあおりを受け、宿毛高校を例にとれば全盛期に800人もいた生徒数が、現在は182人しかいない。生徒数が少なければ、運動部の活動にも影響を及ぼす。

 「例えばバスケットボール部。単独でチームを組むのは難しく、近年は(近隣の高校との)合同チームを組織して高体連の大会に出ている」(宿毛高校の泥谷耕二校長)

 この高校の部活動の特色としては、相撲部、レスリング部、なぎなた部が存在することだろう。中でもなぎなた部は県内で唯一の存在だ。

レスリングを通じて宿毛を盛り上げる!

 レスリング部の部員は、新学年になった現在、昨年6月の「第1回櫻井つぐみ・清岡幸大郎杯」で選手宣誓を務めた51kg級の大串一央のみ。練習は市内にあるもうひとつの高校、宿毛工業高校に通いながら、県大会にも出場する西山大翔や、現地の小学生、中学生も含めた「すくもレスリングクラブ」で行うことが多い。

▲一人部員で奮戦する大串一央選手

▲釣りが趣味の大串。釣った魚とともにこの笑顔

 同校のレスリング部は、2002年の「よさこい高知国体」でレスリング会場になったこともあり、フルマットを装備する環境が行き届いた施設に生まれ変わった。

「レスリング場には業務用のエアコンが3つほど整備されています」(頼田代表)

 今回の連携協定を機に、市内の空き家を借り上げ、そこを寮として使用する計画も進む。「レスリングをやろう、と宿毛高に越境入学して、かかるのは食費だけで、住居費はかからないようにしたい」(同)

 会見に出席した宿毛市レスリング協会の三木健正理事長は「今回の協定によって、レスリングが地域を巻き込んでいく可能性がある」と意気込む。「要となるのは地域の力。レスリングを通じて、宿毛を盛り上げていきたい」

▲隣は土俵が2つもある相撲場。レスリング道場も設備は整っている

人口減少が進む地方の現実に向き合っての新たな挑戦

 今回の協定は、人口減少が進む地方の現実に向き合いながら、新たな環境づくりを整備するという新たな試みでもある。

 泥谷校長は「地方だからこそできる取り組み」と話す。よく関係人口という言葉が使われますけど、宿毛高校に入る、レスリング部に入部する、練習して活躍する、卒業しても宿毛が自分が生まれ育ったところと思ってもらえるような組織づくりをしてきたい」

※関係人口=移住した「定住人口」でもなく、観光などで一時的に訪れる「交流人口」でもない、特定の地域や人々と中長期的かつ多様に関わる人々のこと

▲取材時、練習していたすくもレスリングクラブの面々

 すでに宿毛市レスリング協会のアドバイザーに就任している櫻井つぐみさんは、定期的に宿毛を訪れ、指導するようになった。

 また宿毛高は、大相撲で現役時、関脇まで登り詰めた豊ノ島さん(現タレント)の母校。相撲とともにレスリングの発展にも協力を惜しまず、桜井同様、協会のアドバイザーにも籍を置く。毎年2月、市内で開催されている「豊ノ島杯宿毛少年少女レスリング パラダイスカップ」は今年の大会で早くも第10回を迎えた。

 恵まれた大自然の中でレスリングに打ち込もうとする者にとって、宿毛市レスリング協会と宿毛高校の強力タッグには、都会の学校にはない魅力があふれている。

(インスタ:https://www.instagram.com/sukumo.wrestling.association/ 
 問い合わせは kyouhei.yorita@gmail.com 頼田まで)。

▲観光スポットはあまた。写真は道の駅すくもサニーサイドパークにあるオブジェ