2025.11.11

【2025年全日本大学選手権・特集】下積みからはい上がった4年生が優勝、総合力で勝ち取った2年連続団体V…山梨学院大

 昨年、圧倒的な強さで国別対抗得点の王座を奪還した山梨学院大が、今年も全階級で3位以上の成績を挙げて優勝。3年生の2人が勝つという来年以降も期待を抱かせる内容を見せた。

 小幡邦彦監督は「大会前から総力戦になると思っていました。日体大は0点(9位以下)が2階級あったのに対し、ウチは全員が3位以内。そこの差が出ましたね」と、同じ3階級優勝ながら総合力で上回った優勝だったことを強調した。

▲2年連続8度目の優勝を遂げた山梨学院大

 第1日を終わった段階で「0点」(9位以下)が確定した階級はなく、有利な位置にいたが、敗者復活戦での成績次第では、日体大か日大に優勝を奪われる状況だった。

 しかし、不本意ながらも敗者復活戦に回った65kg級の荻野海志(日体大・西内悠人に黒星)、74kg級の安藤慎悟(中大・林拳進に黒星)、86kg級の五十嵐文彌(日体大・髙橋海大に黒星)が順当に勝ち上がって3位決定戦へ。準決勝で敗れた97kg級の増田大将(日大・吉田アラシに黒星)とともに銅メダルを獲得。

 この時点で優勝が確定し、決勝のマットに上がった57kg級の勝目大翔と61kg級の須田宝の3年生が、重圧に襲われることもなく実力を出し切り、独走状態で優勝杯を引き寄せた。

五十嵐文彌の「世界王者と闘いたい」の闘志がチーム全体に伝わった

 同監督が「言い訳にしかならないけれど」との前置きで明かしたのは、86kg級の五十嵐の腰の負傷。先月下旬のU23世界選手権(セルビア)のときから万全ではなく、この大会では棄権させることも考える状況だったと言う。本人が「世界チャンピオン(髙橋海大)とやらせてください」と強く希望し、「無理と判断したら試合を止める」との条件で闘わせたそうだ。

 結果としては負けてしまったが、その闘志がチームに伝わったのは言うまでもない。同じく連覇はならなかったが、荻野主将に対しても「1年間、チームをしかりまとめてくれました。『ありがとう』と言いたい」とねぎらい、東日本学生リーグ戦での優勝とともに団体二冠王者の原動力と感謝した。

▲負傷にもかかわらず、世界王者との闘いを熱望し、善戦した五十嵐文彌(赤)

▲チームをけん引した荻野海志主将の胴上げ

 最上級生で貴重な優勝を成し遂げたのは70kg級に冨山悠真。茨城・霞ヶ浦高時代はインターハイ5位の選手。全国王者だった荻野、五十嵐、小野正之助(現ペンシルベニア州立大)の同期生とはスタートから大きな差があった。最後に学生タイトルを取らせることができ、「よく成長してくれました」と言う。

誰かがつまずけば、他の誰かが補うのが団体戦勝利の鉄則

 冨山は、高校3年生のときに東京オリンピックがあり、代表だった高橋侑希コーチ(57kg級)にあこがれて山梨学院大へ進んだという。「その高橋コーチから褒めてもらえる日が来るなんて、思ってもいなかったです」と感慨深そう。「世界チャンピオンになったマサ(小野正之助)や、カイジ(荻野)、フミヤ(五十嵐)がいて、環境に恵まれました」と、トップ選手に囲まれた練習環境に感謝する。

 東日本学生リーグ戦では優勝に直結する活躍をした一方、8月の全日本学生選手権ではベスト16に低迷。負傷があって満足な練習ができなかったせいもあるが、「言い訳すらできない成績。一番の敗因はメンタル」と悔しさが残り、この3ヶ月、しっかり強化してきた成果がこの優勝と振り返った。卒業後もレスリングを続けるので、「もっと頑張りたい」と言う。

▲初戦で8月に負けた相手にリベンジ。その勢いで優勝まで突っ走った冨山悠真

 誰かがつまずけば、他の誰かが補うのが団体戦勝利の鉄則。2人の4年生が優勝を逃したが、下積みからはい上がった4年生が勝ったのだから、今回の優勝はチーム全体の勝利。4年間をかけてじっくり育てた結果だったと言えよう。

 今後へ向けて3年生2人の優勝は心強いが、日体大も3年生の2人(65kg級・西内悠人、79kg級・神谷龍之介)が勝ち、1年生3人が3位以内に入るなど、今年以上の戦力になることが予想される。「来年に向けてもっと強化していかないとなりません」と気を引き締めた。


 ■57kg級優勝・勝目大翔「今年は、ケガから始まって、あまり調子はよくなかった。インカレ(全日本学生選手権)の前も、だまし、だましやっていました。優勝できてうれしい、というより、安心したという気持ちです。

 (インカレ決勝で負けた弓矢健一が不出場だったが)誰が相手でも全力を尽くすだけなので、特別な気持ちはなかったです。(決勝は静岡・飛龍高時代の同期生)昔に戻ったような気持ちで闘いました。楽しかったです。今後は、まだ全日本選手権での優勝がないので、そこを目指します」

▲高校の同期生を破り、昨年の全日本学生選手権以来の優勝を勝ち取った勝目大翔

 ■61kg級優勝・須田宝「(アジア王者など国際舞台で成績を残した選手として)負けられない、という気持ちはありました。相手(向田旭登=専大)とは去年、ポイントを取り合う試合をしました。今回も取り合う展開を予想したけど、焦らずにやれば大丈夫との自信はあったので、落ち着いて闘いました。

 今年は世界の舞台でも闘い、いろんな経験をさせてもらいました。技術的にも精神的にも、国際舞台で学んだことを出せたかな、と思います。全日本選手権から65kg級に上げる予定です。荻野選手との練習ではまったく勝てないし、(日体大の)西内選手もいて、その上にもいる(清岡幸大郎=カクシングループ)。しっかり体をつくって頑張りたい」

▲学生王者を破り、61kg級の有終の美を飾った須田宝。12月から激戦区・65kg級に挑む