※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
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(文=保高幸子)

前田祐也(鳥取・鳥取中央育英高職)
男子グレコローマン80kg級は“市民レスラー”前田祐也(鳥取・鳥取中央育英高職)が2回目の世界選手権に挑戦する。昨年12月、非オリンピック階級のみの世界選手権がハンガリーで行われたが、前田は代表として選出されなかった。「去年出られなかった分の悔しさをぶつけたい」と決意を固めている。
前田は現在フルタイムで働いている。平日は仕事のあとにウエイトトレーニングとランニング。週末、マットに上がるという生活だ。昨年は勤務地とレスリングマットのある倉吉まで片道1時間を移動していた生活だった。今年4月に県庁職員として採用され、レスリング部がある高校での勤務。仕事にはまだ慣れないものの、「すぐそばにマットがあるのはいいですね」と言う。
地元鳥取に戻ってからは「他の代表選手と比べたら、10分の1以下の練習量」となり、負けてもしょうがない、と思っていた時期もあった。しかし昨年11月の全国社会人オープン選手権で若手選手に負け、もう一度闘志が湧き上がった。
その1ヶ月後の全日本選手権でリベンジを果たし、今年6月には世界選手権出場につなげることができた。誰にも追い込んでもらえない環境で、仕事の後、どんなに疲れていても自分で気持ちを奮い立たせてトレーニングしている。
■「応援してくれる人がいるから頑張らないと」
全日本合宿や海外遠征にはほぼフルで参加できるよう配慮してもらっていることに感謝している。「合宿初日はいつもボコボコにやられます」と笑いながら、合宿で“格上”の選手たちに当たって気づくことも多くある。
「ファーストコンタクトで負けている。頭の位置が悪いし、ファーストコンタクトで腕とりされている。いいところを取ったつもりになっていたんですが…」。

全日本合宿で練習する前田祐也
実は相手にいいところを取られており、6分間ずっと苦しい闘いをしていたことに最近気づいた。今まで自分の試合のビデオは、点を取られた部分だけを見ていたため、なかなか気づかなかったそうで、「ビデオを通しで見ることも必要ですね」と、今後の研究で改善していきたいところ。
7月のポーランドとスペインの遠征では4試合して1勝。「全力を出すつもりで行っているのに、海外ではいつもびびってしまう。胴タックルに行ってカウンターを取られたらどうしよう、となって、技が出せなかった」と話し、以前から言っている「あがり症」が心配だが、ファーストコンタクトの問題をクリアしたら、今までよりも余裕ももって試合に臨めるはずだ。
「応援してくれる人がいるから頑張らないと。2015年(米国)は初戦敗退だったので、絶対に1勝したいんです」-。誰よりも勝利に飢えた前田。まず一つ、そしてまた一つ、ひとつでも多くの勝利を勝ち取るため、覚悟を決めてマットに上がる。
前田祐也(まえた・ゆうや=鳥取・鳥取中央育英高職) 2大会連続2度目の出場
1994年2月19日生まれ、23歳。鳥取県出身。鳥取・倉吉総合産業高~拓大卒。173cm。高校時代はJOC杯カデットで優勝するものの、高校の全国大会は無冠。2014年にJOC杯ジュニア84kg級で勝ち、世界ジュニア選手権へ出場。全日本選手権80kg級2位と急成長。2015年に全日本の2大会を制するとともに、世界選手権へも出場した。
2016年は全日本選抜選手権、全日本社会人選手権、全日本選手権を制し、この階級の第一人者の地位をキープしている。
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