※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
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(文=樋口郁夫) 松坂誠應(自衛隊)
アジア選手権には2度出場しているが、世界選手権は重みが違う。「中途半端な試合なら、『出なかった方がいい』と言われてしまう。実力はまだないけど、思い切ってやりたい」。控えめの中にも初の大舞台にかける意気込みが感じられる。
昨年、リオデジャネイロ・オリンピック世界予選に出場している。前年の全日本選手権で松本篤を破って2位となり(優勝は松本真)、めぐってきた出場権だった。オリンピックの第1候補選手を破っての全日本2位だから、まごうことのない日本代表だが、今から振り返ると、「世界で闘える心身ではなかったですね」と話す。
日本代表になったとはいえ、国際大会では何の実績も残していなかった。その状態で勝ち抜けるほど甘い世界ではない。「自分の弱点を知りました」という世界の壁。経験してこそ分かった課題に取り組み、「ひとつずつこなして、少しレベルアップできたかな、と思っています」と、今にいたっている。
6月の全日本選抜選手権決勝で闘う松坂=撮影・矢吹建夫
■屈指の進学校・島原高からは創部53年目で初の世界選手権代表
上昇気流を後押しするのが、4月から進んだ自衛隊の環境だ。学生の時は当然のことながら授業が優先。今はそれがない。規律では学生時代以上に厳しい面もあるが、「組織の一員という自覚が出て、頑張る気持ちになれる」と言う。
自衛隊は昨年のリオデジャネイロ・オリンピックで初めて代表を出すことができず、巻き返しをかけて燃えている。今年は松坂以外に65kg級の鴨居正和と97kg級の赤熊猶弥とが代表権を獲得し、全体の士気が上がっている。1階級上の代表も自衛隊の選手ということは、自衛隊での練習も全日本合宿のようなもの。「最高の環境に身を投じたと思っています」と話す。
全日本合宿で練習する松坂
長崎県出身選手としては1975年の宮原照彦以来42年ぶりの世界選手権出場(グレコローマン62kg級=翌年のモントリオール・オリンピックにも出場し4位)。生徒の半数以上が国公立大学に進む進学校の島原高からは、創部53年目で初の世界選手権代表となる。
奇しくも昨今、同高出身の山梨学院大・下田正二郎部長が同大学の黄金時代をスタートさせた。それに呼応するかのように、島原育ちの松坂が世界へ飛躍する。
松坂 誠應(まつさか・まさお=自衛隊) 初出場
1994年7月18日生まれ、23歳。長崎県出身。長崎・島原高~日体大卒。176cm。高校時代は全国大会無冠。大学2年生(2014年)のJOC杯で優勝し、世界ジュニア選手権出場と台頭。2015年は学生二冠王に輝き、全日本選手権は2位。
2016年はオリンピック予選に出場したが、実らなかった。その後、全日本学生選手権で優勝。国体は2位とつまずいたが、全日本大学選手権で勝ち、2年連続で学生二冠を制覇。全日本選手権で初優勝。
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![]() 2012年全国高校生グレコローマン選手権で2位入賞 |
![]() 日体大2年生の2014年JOC杯で初の全国制覇を達成 |
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