レスラー列伝 アレクサンダー・カレリン

「上がらなかったカレリンズ・リフト 最後の黒星の真相を追う」

文=樋口郁夫(日本レスリング協会広報)

 12年間にわたって負けを知らなかった世界最強の男、アレクサンダー・カレリン(ロシア)。2000年シドニー五輪で敗れ、五輪4連覇はならなかった。偉業を妨げたのは、“必殺技へのこだわり”だったのではいか?


(本文より)

 2000 年シドニー・オリンピックは、戦後のオリンピックで続いていた日本のメダル獲得を続けられるかどうかが注目だった。

 これは、大会の前半に行われたグレコローマン69kg 級の永田克彦選手が銀メダルを獲得。フリースタイルの開始を待つことなく伝統を守ることができた。

 同じ日、世界のレスリング界に大きな衝撃が走った。1988 年のソウル・オリンピック以来、12 年間にわたって負け知らずだった世界のスーパースター、グレコローマン130kg 級のアレクサンダー・カレリン(ロシア)が決勝で敗れ、オリンピックV4の夢がついえた。

 日本のレスリング界にも大きな影響を与えた“史上最強の男”は、なぜ最後の最後で負けたのか。それは、闘う相手を恐怖のどん底に陥れた必殺技、カレリンズ・リフトへのプライドだったのではないか。