※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子)
全日本社会人選手権の男子グレコローマン96㎏級では、優勝候補の森保弘(三重・朝明高教=右写真)と山本雄資(警視庁=左写真)が7月13日に行われる世界選手権(9月、イスタンブール)のプレーオフに備え、ともに棄権した。同大会で優勝すると、秋に米国遠征という“副賞”があるため、森、山本ともに「できれば出たかった」と本音を話す。だが、一度は道が閉ざされた世界選手権出場のチャンスがめぐってきたため、すでに気持ちを2週間後のプレーオフに切り替えている。
全日本選抜選手権の優勝の北村克哉選手のドーピング違反によって行われる今回のプレーオフには、森と山本のほか、有薗拓真(山梨学院大)を加えた3人が出場。3人の誰がが2連勝するまで試合を続ける形で行われる。山本は「北村先輩とは全日本の合宿で一緒に練習してきた間柄で、自分の階級のチャンピオンであり、目標でした。そういう存在の人がいなくなるのはちょっと…(寂しくなる)」と複雑な心境を吐露した。
候補3人の中では、“職業レスラー”である山本がキャリア、環境ともに一番恵まれている。5月のアジア選手権(ウズベキスタン)でも5位入賞と海外の成績もある。「有薗には1回負けたことがあります。森先輩とは最近試合をしていないけど、昔はよく負けていましたが、自分が一番頑張なければならないし、負けられません」と意気込みを語った。
森は全日本選手権と全日本選抜選手権で、ともに北村に負けての3位、2位の成績。「陽性が出なかった12月と、失格になった4月の大会で(北村と)闘って。特に変わったなという感じはありませんでした」と寂しそうに振り返った。だがチャンスが回ってきたことは事実で、「もともとなかった話。負けてもレスリングを辞めるわけではないので、ケガなく頑張りたい」と抱負を話した。
森は日体大卒業後、三重・朝明高で教員を始めて今年で5年目となる。職業レスラーの山本や、学生の有薗に比べると練習環境は秀でているとは言えない。だが、「三重県の環境で勝って、地方でもできるんだというところを見せたいです」と仕事と両立しての世界選手権代表を狙う。