※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 奥野春菜(三重・久居)と育てた箕浦健太監督
初戦と2回戦は圧勝だったが、準決勝と決勝は6分間フルに闘って失点もした。「内容もぎりぎりだった。勝ったけど、無意識に3連覇を意識して、自分の動きができなかった。3連覇ができたらうれしいし、できなかったら悔しいし…。周りから見たら勝って当たり前と言われていたけど、非常に苦しかった」と吐露した。箕浦健太監督も「ベストではなかったが、よくやった」と称えた。
奥野は吉田沙保里選手と同じ三重・一志ジュニア教室出身で、高校も後輩にあたる。愛知・至学館や東京・安部学院など全国から強豪選手が集まる大所帯とは違い、部員8人で、女子部員は4人というこじんまりとしたクラブ。「至学館などに比べたら練習量が全然足りないので、スタミナはない。その分、技を練習してきました」と、練習も工夫している。
練習相手が少ない分、奥野は自ら朝練習を課し、夕方、高校での練習を終えると、一志教室でさらに練習している。
インターバルで奥野に指示を出す箕浦健太監督
箕浦健太監督は、岐阜・岐阜工高~日体大卒の経歴を持つ若手の指導者。卒業後、縁があって久居に赴任し、1年後に奥野を預かることになった。奥野は中学3年生の時に全国2冠に輝いた大物選手。「初めて見た時、高校レベルを超えているな、と感じました。絶対につぶしてはいけないと思いました。僕ができることはすべてやろうと思って、この3年間は奥野のために何でもやってきました」。全力で指導したことで、奥野を3年間チャンピオンに仕上げることができた。
今大会、3連覇のプレッシャーに押しつぶされそうになった奥野を救ったのは箕浦監督だった。「先生から『オリンピックでは、もっと緊張するし、もっと強い選手と対戦することになるんだ』と言われて、気が楽になった」。オリンピックで金メダルを目指している奥野にとって、インターハイは通過点。これからもっと厳しい闘いが待ち受けている覚悟をした時、自然と今大会のプレッシャーと不安を乗り越えることができた。
インターハイで無事3連覇を達成した奥野が次に見据えるのは、世界カデット選手権(9月13~18日、ジョージア)だ。「今回は内容がよくなかったので、世界カデット選手権では攻めのタックルで優勝したい」ときっぱり。
タックルにこだわる理由は、もちろん、「沙保里さんをはじめ、一志ジュニアで受け継がれている技なので」と、笑顔で話した。