※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子)
準決勝も決勝も快勝だった井筒主将(写真は準決勝)
監督は高校レスリング界の雄、霞ヶ浦(茨城)で23回もインターハイを制した大澤友博氏が務め、コーチは元学生王者の砂川航祐と元全日本王者の森下史崇(ともに日体大卒)。指導陣も豪華な上に、今年は全国中学王者などの新戦力が加わり、全7階級そろって全国へ。優勝候補の一角とみられていた。
順調に勝ち進み、一番のヤマ場となったのは、全国高校選抜大会で悲願の初優勝を飾った鹿屋中央との一戦。3年生中心でまとまりのあるチームだが、この難敵に5-2と快勝して決勝進出を決めた。砂川コーチは「鹿屋中央戦は一番いい形で勝てました。けれども、順調に決勝まで勝ち進んだことが逆に不安でした。インターハイって何が起こるか分からないから」。 森下コーチ(左)と砂川コーチの日体大同期生コンビの強化が見事に開花
■チームスコア1-3の後がない状態から、主将の快勝で流れを呼び戻す
その言葉通り、“アクシデント”が起こった。50kg級の服部大虎が勝って幸先いいスタートを切ったものの、国体王者でチームの柱の一人である55kg級の山口海輝が飛龍の片桐大夢に投げ技を3度決められ、まさかのテクニカルフォール負けを喫してしまった。
砂川コーチは「山口の動きに合わせて技をかけてきた。研究されていたし、そのために何度も練習してきた技でしょう。準決勝で鹿屋に勝って、少し余裕が出てしまっていた。強い、強いと言われていても、うちは創部2年目で1、2年生のチーム。片桐は3年生。やはり3年の意地は怖い」と、全国の舞台での経験不足がチームの柱の黒星につながったと分析した。
高校生の学校対抗戦は、わずかなことで急に流れが変わる。50kg級で服部が勝ったことで日体大柏が有利かと思われたが、エースの山口が負けると、流れは一気に飛龍に傾いた。続く60kg級、66kg級も敗れて3連敗。チームスコア1-3となって後がなくなった。
階級 | 日体大柏 | 試合結果 | 飛龍 | ||
50kg級 | 服部大虎 | ○ | 3-0 | 佐々木航 | |
55kg級 | 山口海輝 | TF、1:13=0-12 | ○ | 片桐大夢 | |
60kg級 | 伊藤謙心 | 2-4 | ○ | 鈴木絢大 | |
66kg級 | 奥井真吉 | TF、2:39=0-10 | ○ | 佐藤佑之介 | |
74kg級 | 井筒勇人 | ○ | TF、2:19=10-0 | 森川陽斗 | |
84kg級 | 白井達也 | ○ | 10-2 | 望月龍太 | |
120kg級 | デレゲルバヤル | ○ | TF、5:57=12-2 | 山本壮汰 |
大澤監督も「山口が負けた時点で、今回は厳しいと思った」と振り返る。
流れを呼び戻したのが井筒勇人主将だった。連続アンクルホールドなどで、第1ピリオドでテクニカルフォール勝ち。84kg級の1年生、白井達也も前に出るレスリングで勝ってチームスコア3-3とし、全国高校選抜王者のプレブスレン・デレゲレバヤルに勝負を回した。王者が4勝目を無事におさめての優勝だった。
砂川コーチは「キャプテンがテクニカルで流れを呼び戻して、白井が続いた。白井は、今回のMVPをあげたいくらい活躍してくれた。『優勝は日体大柏だろう』という周りのプレッシャーに押しつぶされずによくやった」と中、重量級の奮起を称えた。
日体大柏は初優勝だが、大澤監督にとっては霞ヶ浦時代の23度の優勝に加えて24度目の全国制覇となった。「来年は25度目の優勝を狙います」ときっぱり宣言すれば、砂川コーチも「霞ヶ浦がずっとグラウンドスラムをやってきたように、これから、日体大柏の伝説を作ります」。
ここ数年は戦国時代が続いた高校レスリング界の勢力図を日体大柏がどのように塗り替えていくのか注目だ。