※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
《高谷惣亮・略歴》 《高谷惣亮の国際大会成績》 《男子フリースタイル74kg級・展望》=近日中にアップ
(文=増渕由気子) 高谷惣亮(ALSOK)
“ビッグマウス”だが、それにふさわしい実績を残してきた。2013年の世界選手権で7位に入賞し、2014年は決勝に進出して銀メダル獲得。一躍、世界トップ選手の一人として知名度を上げた。今大会の男子両スタイル代表の4選手の中では、最も世界で実績を残してきた選手だ。27歳で挑むオリンピックは、日本のエースとして出場する。
一方では挫折も味わった。オリンピックの第1次予選だった昨年の世界選手権(米国)は、2回戦でアニウアール・ゲデュエフ(ロシア)に完敗。ゲデュエフが決勝に進めなかったため敗者復活戦に回れず、2度目のオリンピック出場をストレートで決められなかった。よほど悔しかったのだろう、会見では涙する一面もあった。
万全で臨みたかった今年3月のアジア予選(カザフスタン)では、2月下旬に右ひざのじん帯を損傷し、出場自体が懸念された。だが、高谷はこの4年で精神力も強くなった。ポジティブ思考で、「けがした瞬間に、予選は勝ち抜ける」と確信。片足しか動かない状況だったが、準決勝では4年前の同予選の決勝で敗れているラシド・クルバノフ(ウズベキスタン=2014年アジア大会優勝)にリベンジして決勝進出。この時点で2大会連続のオリンピック出場を決めた。 4年前と同じく、アジア予選でオリンピック出場を決めた高谷
アジア予選のあと、6月にはマケドニアでの国際大会に出場して優勝するなど順調かと思われたが、今度は首を負傷し、7月の2度にわたる全日本合宿参加を取りやめた。首のけがは競技力に直結する。エース負傷では、日本男子勢はメダル「0」の危機に直面したと言えるかもしれない。
けれども、右ひざ負傷でアジア予選を乗り越えた高谷のメンタル面は揺るがなかった。「僕は逆境に強い。こうやって注目されていることがパワーの源。レスリングと言えば『(吉田)沙保里さんと高谷』と言われることも多くなってきた。僕がメダルを獲って、レスリングブームを起こしたい」と饒舌(じょうぜつ)だ。
それに値することはやってきた。この4年間、フィジカル面の数値は、どれをとっても驚異的にアップ。「骨格筋量は10kg増えましたし、体脂肪は、13パーセントから通常時で8パーセントになりました。スクワットは100kgだったのが160kg程度上げられようになりました。日本が重たい階級で勝てないのは、フィジカルの問題が多い。(適切な)食生活とウエートトレーニングを、いかにレスリングにつなげられるかを、この4年間、考えてきた結果です」と満足げに話す。
■「オリンピックで金メダルを獲るために練習してきた」 6月のマケドニア・パール国際大会で優勝、金メダルをかざす高谷。リオデジャネイロで再現なるか
「ロンドンの自分と今の自分が試合をしたら、速攻でテクニカルフォール勝ちをする自信があります。4年前の映像と今の僕を比べてください」と強調した。
現在は、けがのため、得意の“クワガタタックル”は封印中。けれども、「ぶっつけ本番でクワガタが出せたら最高です」と、3つのタックルの中では一番得意であり、こだわりのある技だ。
「僕はオリンピック出るために練習してきたんじゃない。オリンピックで金メダルを獲るためにやってきた」。
4年前は、日本男子勢として米満達弘(自衛隊)が24年ぶりの金メダルを獲得した。今度は、リオデジャネイロでは高谷が日本男子の伝統を守り抜く―。