2016.07.26

男子オリンピック代表チームが岐阜と日体大で最後の追い込み合宿

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 男子両スタイルのオリンピック代表チームが追い込み練習としては最後の合宿に入った。フリースタイルは7月23日から標高1800メートルにある岐阜・濁河(にごりご)温泉で、グレコローマンは25日から日体大で、それぞれ合宿をスタートした。

 ともに、8月に東京・味の素トレーニングセンターで合宿を予定しているが、減量を含めた調整合宿になる。息を上げ、体力を養成する合宿は今回が最後だ。

■フリースタイルは標高1800メートルの高地で体力トレーニング

 フリースタイルは岐阜県と長野県の県境にある日本最高所の温泉地を最後の練習地に選んだ。米国、ロシア、イランなどの強豪国は高地トレーニングによって体力増強に努めていることから、和田貴広・男子フリースタイル強化委員長(国士舘大教)が「優勝するには、減量した状態で1日5試合を闘い抜く体力が必要」として、酸素の薄い地での練習を希望。

 毎夏恒例の菅平(標高1300メートル)より高い地にある合宿地を探していたところ、文部科学省の宿泊・練習施設のある濁河温泉を探し出し、実現した。米国のナショナルチームの常設練習場があるコロラドスプリングズが標高1840メートルで、ほぼ同じ高さとなる。

 グラウンドもあり、ランニングする場所にも事欠かない環境。体が慣れていない初日、2日目は練習を抑えたそうだが、3日目のこの日は朝のランニングやスパーリングをフル回転。和田強化委員長は「かなり息が上がっていました」と言う。宿舎には源泉かけ流しの温泉があるので、疲労回復にも努められるという。

 なお、74kg級代表の高谷惣亮(ALSOK)は首の負傷のため大事を取り、自衛隊で井上謙二コーチの指導のもとで練習している。

■「まだ3週間あるので、今は緊張はしていない」…太田忍(ALSOK)

 グレコローマン・チームは日体大で学生選手とともに練習した。2人の代表以外の全日本チームの選手に加え、学生選手を含めて総勢約40選手(フリースタイルの学生選手を含めれば80選手)の中で、活気あふれる2時間半の練習。30日までの合宿中、2日間は1日3回練習をやって体力アップをはかるという。

 西口茂樹・男子グレコローマン強化委員長(拓大教)は「2人とも、けががあったけど、順調にきている」と、2選手の仕上がりに太鼓判。この時期に1日3回練習することに疑問を呈する声もあるかもしれないが、「太田、井上ともに納得している」と、気持ちの盛り上がりを説明した。

 リオデジャネイロのマットに男女を通じて最初に上がることになる59kg級の太田忍(ALSOK)は「緊張するタイプなんですけど、まだ3週間あるので、今は緊張はしていない。でも、いよいよだな、という感じです」と現在の心境を話す。

 6月のポーランド遠征は腰痛が悪化して「ピトラシンスキ国際大会」を途中棄権した。だが、「痛めていたのはずっと前から。痛くない日はないくらい」と、満身創痍が今も続く“普通の状態”。その中で練習内容を濃くし、負荷をかける練習ができていると自負している。

 外国選手の研究も十分にやっている。「1人の選手に対して(ビデオを)20回以上は見ています。(世界1・2位の)キューバとアゼルバイジャンは見飽きました。勝つイメージはできています」と自信を見せた。

■「どの選手が出てきても、グラウンドの防御をしっかりやるだけ」…井上智裕(三恵海運)

 66kg級の井上智裕(三恵海運)は今月の中旬、ぎっくり腰に襲われ、1週間はスパーリングができなかったが、低周波、鍼(はり)、超音波などで治療に努め、この日は「8、9割方できている。あとは完治だけ」との状態。

 3月のアジア予選(カザフスタン)の2週間前にも、今回とは違う痛みだが腰を痛めたという。「あの時は試合まで2週間だったので焦りました。今回は1ヶ月あったので、焦りはなかったです」と言う。

 エントリーも判明してきたが、太田と対照的に、あまり外国選手の分析はしていないという。「どの選手が出てきても、グラウンドの防御をしっかりやり、自分の攻撃をするだけ」とのことで、これができなければ、研究しても意味がないからだ。

 2人ともオリンピック選手としての周囲の期待の大きさに驚いているが、「プレッシャーになることはありません」と口をそろえる。日本代表の誇りを胸に、いよいよ最後のコーナーを回った。

タックル練習に励む樋口黎(日体大)=チーム提供

日本協会が初めて使う濁河温泉の体育館=チーム提供

追い込む最後の合宿で汗を流す太田(向こう側の黒)と井上(こちら側の黒)

井上に技術指導する豊田雅俊コーチ