※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 優勝した山口海輝(千葉・日体大柏)と砂川航祐監督(右)、森下史崇コーチ
山口は今年3月の全国高校選抜大会では決勝で谷山拓磨(京都・京都八幡)に敗れて2位。4月のJOC杯も決勝で阿部に敗れて2位とタイトルを獲れずにいた。
山口は「選抜、JOC杯と、いい動きができなくて、今回も不安がありました。正直、僕はそこまで気持ちが強くないので、また闘うことを嫌だなと思ってしまいました」と、準決勝で阿部と再度闘うトーナメントを見た時の感想を振り返った。
■元全日本王者の森下史崇コーチの加入で成長
その不安要素を吹き飛ばす救世主が現れた。2014年アジア大会(韓国)代表で、全日本選手権を3連覇し日本のトップ選手だった森下史崇が同校に講師として赴任し、砂川航佑監督とともにレスリング部の指導を任されることになった。 決勝で闘う山口海輝
それでも、やはり阿部は強かった。バックを取られて先制を許し、連続ローリングで大量失点。0-8と追い込まれたところで第1ピリオドが終了した。「心が折れて、勝負をあきらめかけてセコンドに戻ると、砂川先生が『まだいける! 取り返せる』と励ましてくれたことで頑張れました」。
山口は第2ピリオドに立ち直り、差しからグラウンドに持ちこむと、連続アンクルホールドで逆転勝利をつかんだ。
心が折れたところから気持ちを盛り上げられたのは、セコンドの砂川監督もそうだが、普段の練習で森下先生とスパーリングを積み重ねてきたことも大きかった。「毎日の練習でボコボコにされて、でも、あきらめずに森下先生と練習をやってきたことがよかった」。ふだんのスパーリングでも、圧倒的にやられても気持ちを投げ出さずに向かっていく経験が試合に生きたようだ。
強敵を倒して久々の“優勝”を味わったが、山口は「この優勝で満足はしない」ときっぱり。得意のアンクルホールドは現在2種類あるようだが、「もっと練習して、もっとバリエーションを増やしていきたい」と、夏に向けて更なる進化を誓っていた。