※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治、撮影=矢吹建夫) けがから復活し、見事に5連覇を達成した鈴木博恵(クリナップ)
鈴木は「相手は高校生だったけど必死に取りにいきました。点数ほどの実力差はないと思います。高校生も頑張って強くなっているので、自分も負けずに頑張りたい」と振り返った。
現在のひざの状態について聞くと、鈴木は「まだ正座とかはできない」と打ち明けた。筋力も100%ではないという。ただ、「レスリングの練習をする分には痛みなくできています。日によって痛かったりするけど、だいたい痛みなく動くことができています」という。
■世界選手権断念のあとは、病床で落ち込んだ
苦しみの中で立ち上がった末の優勝だった。昨年は世界選手権の3週間前にひざを負傷して、出場を断念。結局、リオデジャネイロ・オリンピックへのキップを手にすることができなかった。 決勝で闘う鈴木博恵
軽い練習を再開したのは今年1月になってからのこと。以前と同じように、練習場所は東京・自由ヶ丘学園高校レスリング部を選んだ。「男子校で、男子高校生と一緒に練習させてもらっています。全日本の合宿以外は出げいこにもあまり行かないですね」
リオデジャネイロへの出場キップを手にするチャンスは、最後に一度だけあった。今年3月25日、女子75㎏級の出場枠を獲得した渡利璃穏(アイシン・エィ・ダブリュ)との間で、日本代表を決める3分2ピリオドの公開スパーリングが行われた。
試合はポイントを取り合う“シーソーゲーム”になったが、ポイントをつけるなら渡利の勝利だったので、女子強化委員会は渡利を日本代表に決めた。鈴木は涙を流した。
■今後も、「1日1日を大切に練習していきたい」 最優秀選手に与えられる明治杯を獲得した
渡利とスパーリングをやった時、鈴木は決して本調子ではなかったが、言い訳はしなかった。「けがをしてしまった自分が悪いので。オリンピックに出られなくても自分がやるべきことはあると思う」
今後について聞くと、鈴木はどこまでとは決めていないと答えた。「1日1日、大切に練習していきたい」-。
5連覇を達成した翌日の大会最終日、鈴木は最優秀選手に贈られる明治杯を初めて手にした。