2016.04.12

男子両スタイルの全日本チームが合宿スタート

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 リオデジャネイロ・オリンピックの日本代表内定選手を含む男子両スタイルの全日本チームが4月11日、東京・味の素トレーニングセンターで合宿をスタート。内定選手は8月の本番へ向けて新たな練習を開始し、出場枠獲得を目指す選手は世界予選(4月22~24日=モンゴル、5月6~8日=トルコ)へ向けて追い込みの練習をした。

 栄和人強化本部長は、2日前の全日本女子チームの合宿スタートと同じく、スポーツ界を揺るがしている賭博問題の不祥事への言及から話を始め、日本代表にふさわしい行動を要求。その第一歩として、味の素トレセンでの生活をただすことを強調し、「昔は、無茶苦茶をしても、勝てば、それが通用した部分はあった。今は通じない。タバコ(の禁止)をはじめ、規則はきちんと守らなければならない」と伝えた。

 そのあと、先月のアジア予選(カザフスタン)で出場枠を取った4選手に感謝の言葉をかけ、「勝った時のコーチの姿を見て、コーチがどれだけ必死でやってきたかが分かった。コーチは選手を勝たせるために命をかけている。これからはオリンピックで勝つために全力を尽くしてほしい」と激励。

 世界予選第1戦に臨む各スタイル4選手に対しては、「絶対に出場枠を取るんだ、という気持ちを持ってほしい。あと4階級ずつは取れる」と話した。

 男子フリースタイルで2度目のオリンピック出場を手中にした74kg級の高谷惣亮(ALSOK)は、アジア予選のあと地元(京都・網野町)に帰って多くの激励を受け、新たなエネルギーを補給。「フレッシュな気持ちで合宿を迎えられました。まだ課題は多い。そこを磨いてオリンピックを迎えたい」と話した。

 一昨年の世界選手権(ウズベキスタン)で2位となり、世界のトップレベルいることは確かだが、昨年はロシア選手に敗れて敗者復活戦に回れず、上位入賞を逃すなど「メダルが確実」とまでは言えない状況だ。「今の位置からどうやって金メダルに近づくか。負ける時のパターンは決まっているので、それをなくし、自分の勝ちパターンに持っていけるようにしたい」という。

 実績からして、チームのエースであることは間違いない。自身が出場枠を取った今、残る選手をサポートし、全階級出場への貢献が望まれる。「アジア予選で自分と(日本伝統の)最軽量級が出場枠を取った。この勢いは次につながると思う。モンゴルで残り階級を取るため、『みんなでオリンピックに行く』という気持ちを持ってもらい、雰囲気をつくりたい」と、世界予選出場選手が出発するまでは、自身の気持ちの鼓舞とともにチームの盛り上げに貢献する腹積もりだ。

■追い風ムードの中で世界予選に挑む若手選手

 世界予選第1戦に出場する8階級で、唯一選手が入れ替わるのが男子フリースタイル86kg級。全日本王者の松本真也(警視庁)が最終戦出場を選択したことで、全日本2位の松坂誠應(日体大)が出場する。松坂は「4年に1度のチャンスなので、しっかりやりたい。腰をちょっと痛めているが、痛いとか言っていられない。しっかり調整して臨みたい」と話す。

 アジア予選では、松本が出場枠獲得にあと一歩だった。松坂も出場枠獲得を射程距離におさめていると思われるが、「アジアと世界ではレベルが違うと思います」と気をゆるめない。ただ、2月に出場したアジア選手権(タイ)での反省を克服して闘えば、「負けることはないと思う」とも。

 世界の強豪選手が順当に出場枠を取っている階級であり、ずば抜けた強豪は残っていない。日体大からOBを含めて3選手が出場枠を取ったことともに、追い風が吹いている状況だ。「絶対に取ってきたい」と気を引き締めた。

 松坂と同じく日体大の学生選手として世界予選第1戦に挑む男子グレコローマン75kg級の屋比久翔平は、練習中のバッティングでまぶたを切ってしまい、この日は技術確認と補強トレーニングが中心。これまでやったことのないトレーニングを課され、かなり息が上がった様子だ。

 「アジア予選では情けない試合をしてしまった。今度は自分の力を出し切って出場枠を取りにいく」と、前回の初戦敗退の悔しさをばねに挑む。「期待からくるプレッシャーもありますが、自分がやるべきことをやれば勝てると信じています」と言う。

 大学の先輩と後輩が目の前で出場枠を取ったのは大きな刺激だという。「自分も負けていられない」という気持ちになるとともに、「日体大のレスリングが一番と思ってやってきた。その環境の中で練習をやっているのだから、絶対に出場枠を取れると思っています」と話し、やってきたこと信じて世界予選へ挑む。

 合宿は、世界予選第1戦に出場する選手が出発する18日(男子グレコローマン)と20日(男子フリースタイル)まで行われる。