2016.04.02

男子グレコローマンの全日本チームが合宿スタート

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 リオデジャネイロ・オリンピックの代表に内定した2選手を含む男子グレコローマンの全日本チームが4月1日、東京・味の素トレーニングセンターで合宿をスタートした。

 西口茂樹・男子グレコローマン強化委員長(拓大教)は「アジア予選で2人がオリンピック・チャンピオンを破るといういい勝ち方をしてくれ、チームのムードはいい。残りの階級の選手も、自分の強い部分を前面に出して闘えば勝てる、という気持ちになってくれている」と、選手の気持ちが上昇ムードになっていると感じている。

 出場枠を取った59kg級の太田忍(ALSOK)、66kg級の井上智裕(三恵海運)とも、ずば抜けた全日本チャンピオンとして君臨していたわけではない。自分のやるべきことをしっかりやってきた結果として出場枠を取ったことで、他の選手も自分の強化するべきことを、信念を持って練習すべきと思っているという。

 このあとしばらくは、オリンピックでのメダルを目指す2人と、出場枠獲得を目指す他階級の選手とで練習方法や内容が変わってくるが、強化という観点では変わらない。全体の底上げの中で、個々の力を上げていきたいという。

 合宿は3日まで同所で行い、4日からは日体大で行う。「ここ(味の素トレーニングセンター)で技術の修正をやり、日体大では多くの選手を相手にした強化をやりたい」と言う。

■アジアを勝ち抜いた2人だが、目標は世界!

 59kg級の太田は、日体大を卒業してこの日からALSOK所属の選手となった。合宿のため入社式には出なかったが、「社会人になれたことで、新鮮な気持ちです。気持ちを入れ直して頑張ろうという感じです」と、出場枠を取ったこととともに、新たな旅立ちとなった。

 アジア予選のあとは地元の山口県に帰り(注=出身は青森県)、県庁などにオリンピック出場内定の報告をしてきた。「すごい応援をされ、その期待にこたえたい、こたえなければならない、という気持ちになりました」と、心理面ではこれまでとまったく違うようだ。

 ロンドン・オリンピック王者のハミド・スーリヤン(イラン)を破ってアジア予選を勝ち抜いたが、「スーリヤンが世界のトップか、と言えば、トップレベルであることは間違いないけど、トップではないと思う。世界チャンピオンはキューバの選手。アジア予選はオリンピックで勝つためのスタートライン」と話し、これからは世界のトップを目指して練習していきたいという。

 アジア予選の決勝でロンドン王者を破り、初の国際大会優勝のおまけもつけた井上は「目標がオリンピックの出場枠からオリンピックのメダルになった。気を引き締め、課題をひとつひとつクリアしていきたい」と言う。

 今年に入ってからグラウンドの防御を重点的に強化し、ある程度できることを実感できるようになって臨んだアジア予選。しっかり守ることができ、それが勝因だと振り返る。「グラウンドをしっかり守れれば勝つチャンスが出てくる、という気持ちを強くしました」と、これまで以上に防御を固くしたいという。

 アジアで勝ったものの、2月のハンガリー・グランプリで1勝(2敗)しかできなかったなど、そのまま欧州の選手相手に通じるものでないことは十分に承知している。「ヨーロッパ・スタイルにも対応していかなければならない。アジア予選のチャンピオンだ、という思い上がりは何もないです」と話し、気持ちはチャレンジャーのままだという。

 チームの中では年上の方で引っ張る立場。「やはり(太田と)2人だけでオリンピックには行きたくない」と、世界予選へ向けて後輩へのバックアップも重要な使命。「練習での力を出し切れば、出場枠は取れる選手ばかりだと思います」とエールを送り、チームを盛りあげていく姿勢を見せた。

元木康年コーチの見守る中で練習する井上智裕(三恵海運)

弟・平が練習相手として参加。園田新(左)に指導する西口強化委員長