※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=樋口郁夫) 両部門で3位入賞を果たした森崎克也(防大)
防大は東日本学生連盟に加盟しているので、選手活動のメーンは学生の大会。2年目を迎える学生レスリング界での活躍の弾みをつけた形だ。
大会を通じての反省点は「体力不足」。体力が足りないから、「バックを取っても極め切れずにポイントを取れない。一度バックを取ったら、必ずテクニカルフォールまで持っていける体力をつけたい」と言う。
両部門に出たのは、勝目力也監督から「厳しい条件の中で勝ち抜くことが、新人選手権やインカレ(全日本学生選手権)で勝ち抜くために必要」と言われ、体力と気力を養成するためだった。この日は監督不在。「監督がいないところでも、しっかりやりたかった」と残念そうな表情を浮かべた。
■勝目力也監督を頼って防大に進学
森崎の父・智宏さんは日体大レスリング部のOBで、現在の日本協会・栄和人強化本部長の1年上。父の影響で4歳の頃からレスリングを始め、宮崎・日向学院高時代に県のインターハイ予選で3連覇を達成。最後の年(2014年)は国体グレコローマン50kg級で3位入賞を果たした。
卒業後もレスリングを続けたい気持ちがあったが、人生のモットーは「文武両道」。レスリングさえできれば、という気持ちで進学するつもりはなかった。防大に学びたい学部があったことと、勝目監督が世界ベテランズ選手権で優勝したニュースを聞き、「この監督の下でレスリングをやりたい」と、防大を選んだという。
1年目の2015年は、東日本学生リーグ戦で2勝1敗。全日本学生選手権では、フリースタイルで山梨学院大の選手を破るなどしてベスト16まで進出した。その時に負けた相手は優勝した大城一晟(国士舘大)。組み合わせによっては、もうひとつ上まで行けたかもしれない。 一般の部で闘う森崎
■目標は同郷の先輩、“シンデレラ”川野陽介
卒業までの目標は「インカレ優勝」ときっぱり。しかし、防大の場合は、まず勉強が普通の大学以上に厳しい。さらに、監督は元一流選手だが(現在もベテランズの世界王者)、大学入学後にレスリングを始めた選手が多いので、学生のトップを目指すには環境的に厳しいのが現実だ。
それをどう克服するか。「ふつうの練習以外の時に、いかに練習するかだと思います。そのためにも、まず体力ですね」と、この日の反省もあって、あらためて体力づくりに励む腹積もり。授業や大学の場所(神奈川県横須賀市)からして、他大学と練習できる機会はそうないが、自衛隊の体育学校の練習に参加させてもらう機会もあり、逆に選手やコーチが大学に来てくれたりもするという。
「自衛隊のトップ選手と練習したり、指導を受けることができるので、環境は決して悪くありません。これを生かしたいです」。自衛隊での目標とする選手は、昨年12月の全日本選手権フリースタイル57kg級で“シンデレラ・ストーリー”を演じた同郷の川野陽介。
グレコローマンでは、目標というよりライバルとして、昨年のこの大会を制し11月の全国社会人オープン選手で3位になった新垣忠勝(沖縄・浦添工高卒)の名を挙げ、「(4月末の)JOC杯で闘いたい。勝ちたい」ときっぱり。
昨年は女子で国立大学(群馬大)の選手が飛躍した。男子も、決して不可能なことではない。自衛隊のパワーをバックに、森崎が学生のトップを目指す!