2016.02.11

全日本女子チームが今年最初の合宿をスタート

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 リオデジャネイロ・オリンピック内定選手やアジア選手権(2月17~21日、タイ・バンコク)の代表選手を含めた全日本女子チームの今年最初の合宿が2月10日、東京・味の素トレーニングセンターでスタート。2020年東京オリンピックを目指す若手選手も加わり、総勢約50人が熱気ある練習を展開した。

 8日から男子両スタイルも同所で合宿を実施中(練習はすべて別)。栄和人・強化本部長は「3スタイルとも勢いを感じる」と話し、オリンピック予選に向かって選手が燃え始めている雰囲気を感じたもよう。ただ、「結果を出さなければならない。練習で燃えるだけでは駄目」と、試合での勝利につながる練習を求めた。

 女子はアジア選手権に48kg級の登坂絵莉、63kg級の川井梨紗子、69kg級の土性沙羅(いずれも至学館大)のオリンピック内定選手3人が出場する。しかし、どの選手も調整練習というより“エンジン全開”といった感じの練習。川井は75kg級の選手ともスパーリングをやるなど、追い込む練習シーンが展開された。

 栄本部長は「女子は、調整練習を1週間も前からやらせたことはない。体重調整はやるが、練習の量は落とさずにやらせている」と、出発(15日)までしっかり追い込む予定という。また、若手選手に対しては、「東京オリンピックへ向けての闘いは始まっている。先輩を倒して自分が出るという気持ちをしっかり持ってほしい」と激励した。

■かつてないほど好調な体重調整の登坂絵莉(至学館大)

 世界チャンピオンとしてアジア選手権に臨む登坂は「いつもと違う選手(若手選手)もいる遠征。いい刺激になります。(伊調)馨さんが負けて、勝負の世界は何が起こるか分からないことをあらためて感じましたが、アジア選手権が本番ではないので、優勝を目指しつつも、オリンピックに向けての試合をやってきたい」と言う。

 大会へ向けての取り組みのひとつに、期間をかけて体重を落とすことがあった。うまくいっているそうで、練習終了時にはあと1kgくらいにまで落ちているという。いつもはこの時期、満足に飲食ができないが、今回は普通に食べ、摂取水分の量もさほど気にしていないという。

 「こんなに余裕があるのは5~6年ぶりくらい。長期間の減量によって、試合で爆発的な力が出せるかどうか、という不安はありますが、今はしっかり動けています」と、好調を強調した。

 75kg級全日本チャンピオンの渡利璃穏(アイシン・エィ・ダブリュ)は、約40日後に迫ったオリンピック・アジア予選(3月18~20日、カザフスタン・アスタナ)が勝負。「今できることに全力で取り組み、オリンピック出場枠を取りにいきます」と言う。

 全日本選手権では「69kg以上」という厳しい増量が課せられた(注=75kg級に出場するための下限)。その反動か、大会直後は66kg台まで落ちてしまったというが、クールダウン期を終えて練習と食事を再開したことで、今は練習前で約71kg。「体重が足りなくて出場できない」という危機は脱した。

 「重くて動けなくては仕方ないので、このくらいの体重で臨みたいと思います」と、あとは筋力やスピードの問題。残る日でしっかり調整したいそうで、「相手の体の大きさにびびってしまっては負け。強気で挑みます」と言う。

 先月のヤリギン国際大会(ロシア)では、渡利が全日本選手権決勝で辛勝した相手の工藤佳代子(自衛隊)が、ロシアの第一人者で昨年の欧州大会2位のエカテリナ・ブキナ(ロシア)を破った。「自分も全力で攻めれば勝てる、という希望になりました」と話し、ライバルからエネルギーをもらって決戦へ向かう。

■手術で戦線離脱していた鈴木博恵(クリナップ)は復帰参戦

 合宿には、昨年夏に左ひざを負傷して手術し、戦列を離れた鈴木博恵(クリナップ)が復帰した。今年に入ってからマットワークを始めたという。まだスパーリングはできないが、打ち込みは普通にこなすなど順調な回復ぶりをアピールした。

 左脚の筋力は完全に戻っておらず、タックルに入られた時の心理的な不安はあるとのことだが、鈴木は「強い選手の中で練習するのは気持ちが違います。しっかりやらないと、という気持ちになります」と話し、表情は明るい。訪れたクリナップの今村浩之監督も「こんなに生き生きした表情の鈴木は久しぶりだ」と評した。

 医師からは、今月下旬にはスパーリングOKとの診断が出ているという。オリンピックの代表争いがどう展開するか皆目見当がつかないが、「可能性がある限り、オリンピックを目標にして頑張ります」と前を向いた。

 レスリング場には、ヤリギン国際大会で黒星を喫した58kg級の伊調馨(ALSOK)も姿を見せたが、同大会で痛めた首のリハビリに専念するとのこと。腹筋運動をこなした程度で、「汗を流すような練習はやりません。けがを治すことが最優先です」と言う。再起の合宿は次回以降となった。

 伊調は、参加予定だったアジア選手権は辞退。代わって全日本選手権3位の樋口美賀子(環太平洋大)が出場する。

 合宿は18日まで行われる。

笹山秀雄コーチの技術指導

若手選手にも積極的に声をかける栄和人・強化本部長

75kg級の選手と練習する63kg級の川井梨紗子(至学館大)

久しぶりの全日本合宿参加の鈴木博恵(クリナップ)