2016.02.10

ハンガリー遠征の男子グレコローマン・チームが帰国

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 ハンガリーへ遠征していた男子グレコローマンの全日本チームが2月9日、羽田空港着の日本航空で帰国した。合宿とハンガリー・グランプリ出場で約2週間にわたる遠征。ハンガリーGPでは、59kg級で日本選手同士が決勝を争い、長谷川恒平(青山学院大職)が優勝、太田忍(日体大)が2位という結果だった。

 元木康年監督(自衛隊)は「合宿では、各選手が海外の強豪に積極的に向かっていった。その姿勢はよかった」と評価する一方、「練習と試合は違う。勝たなければならないという心理面やルールへの対応などがからみ、簡単に勝たせてもらえなかった」と、59kg級以外は1勝9敗という成績を振り返った。

 「オリンピック・アジア予選までの約40日間、しっかり強化していかなければならないことを、あらためて知った」と言う。

ハンガリー・グランプリで優勝の長谷川恒平(右=青山学院大職)と太田忍(日体大)

 大会で好成績だった59kg級の2人は、合宿の時から外国選手相手にポイントをしっかり取るなど、日本選手の中でも目立っていたという。「大会の結果は予想と期待通りだった」とのことで、挑むだけでなく、ポイントを取って外国選手から一目おかれるようになってこそ、試合で勝てるのが現実だ。

■「チーム・ジャパンとして出場枠を取りにいく」…長谷川恒平(青山学院大職)

 全日本選手権決勝のリベンジを果たして優勝した長谷川は「2番手であるにもかかわらず遠征に選んでいただいた強化委員会、送り出してくれた職場に感謝したい」と、成績のことより、まずこの環境をもらえたことに感謝の言葉。

 国際大会出場は2014年10月のアジア大会(韓国)以来と期間があいたうえ、前回のロンドン・オリンピック前に比べると仕事の関係で練習量も少なくなっており、条件は悪かった。そのため、合宿で外国選手と練習することで体力を取り戻し、試合に臨むことを決めていた。それをしっかりできたことが、優勝につながったという。

 2-2のラストポイントによって勝った太田との決勝は、「お互いにいいところが出たと思うし、課題も見つかった」と振り返る。合宿では、外国選手は途中から2人との練習を拒否し出したという。試合前だったこともさることながら、2人の強さや積極性が際立っていたからでもあろう。「忍と決勝をやるんじゃないかな、と思った」そうで、日本の強さを見せられた遠征だったようだ。

 ただ、2011年の世界選手権(トルコ)で敗れた相手で、2012年ロンドン・オリンピック3位のピーター・モドス(ハンガリー)が中国選手にテクニカルフォールで敗れるなど、若手の台頭も感じた大会だったという。

 太田がアジア予選で出場枠を取れば、自身のオリンピック挑戦はなくなる。「そうなったら、これが最後の国際大会になります。1試合、1試合を全力でやってきました」と話す長谷川の表情からは、太田のつまずきを期待する雰囲気は感じられない。

2週間の遠征を終えた男子グレコローマン・チーム

 「お互いに高め合って、チームジャパンとしてオリンピックの出場枠を取りにいけたらな、と思います」。太田が出場枠を取れば快く送り出すだろうし、自身が取れば、“タッグチーム”を解消し、死力をぶつけ合うプレーオフへ挑むことだろう。

■優勝を逃したことは残念だが、課題が明確に持てた…太田忍(日体大)

 2位に終わった太田は「合宿では、がぶりの時の身のこなしや、腕取りなどのスタンドの攻撃パターンを増やすという課題の克服に挑み、外国選手にどのくらい通じるかを試したが、まだ2~3割。試合では1回戦で5点技をくらったりして、準決勝までは自分の試合ができなかった。予選ではやってはいけない試合だった」と厳しい自己採点。ただ、決勝は何度も練習や試合をしている長谷川が相手ということで、「緊張なくできた。決勝の時と同じような試合がアジア予選でできればいいと思う」と振り返った。

 優勝を逃したことは残念だが、落ち込みはない。「負けてよかった、というのも変ですが、優勝してしまうと、喜びの中で課題がぼやけてしまうような気がします。負けたことで課題克服への強い気持ちが芽生え、悔しさをもって練習に打ち込めると思います」と言う。

 アジア予選では、2012年ロンドン・オリンピック優勝で世界一に7度輝いているハミド・スーリヤン(イラン)、太田が2連敗している2014年世界3位のエルムラト・タスムラドフ(ウズベキスタン)、2015年世界7位のキム・スンハク(韓国)らの強豪の参加が予想される。

 「厳しいけど、勝たなければならない。しっかり対策をたてて臨みたい。大会初日なので、自分が出場枠を取ってチームを勢いづけたい」と気合をこめた。