※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
帰国した選手。左から岩群安奈、伊藤史織、金メダルの坂野結衣、源平彩南
木名瀬重夫監督(日本協会専任コーチ)は「参加国や選手数は少なかったが、アメリカ、ロシア、中国、カナダとも強豪選手がいて、レベルはけっこう高かった」と振り返る。その中で58kg級の坂野結衣(日大)が4試合に勝って優勝。日本の意地を見せた。
坂野は1回戦から準決勝までの3試合、いずれも先制されたものの、最後はフォール勝ちという内容。「先制して突き放して勝つのが理想だが、冷静に試合を進めて逆転し、勝利につなげたのは立派」と評価。決勝はあまりアドバイスを送らず、坂野の思った試合をさせたそうだが、きっちり勝ってくれ、成長を感じたという。
他の3選手は残念ながら初戦で敗れ、敗者復活戦に回ることができなかった。坂野もそうだったが、全体的に外国選手の開始直後の瞬発力に、「たじろぐことはなくとも力を出せず、後手に回ってしまう」という傾向があったという。53kg級の岩群安奈(アイシン・エィ・)ダブリュ)は、米国の一番手相手に第2ピリオドは互角以上に闘えているだけに、開始直後の攻防に課題があると見ている。
「ポイントを取りに行かせてはいるが、ここを守り切ることに全力を尽くさせることも必要かもしれない。後ろ向きの考えではなく、序盤は取らなくてもいいから0点に抑えることを考えることも必要。そうすれば試合の流れも変わってくると思う」と話した。
■3年2ヶ月ぶりのシニア優勝で再進撃へ…58kg級・坂野結衣(日大)
優勝した坂野は「優勝はうれしいのですが、練習してきたことができなかったことが悔しいです」と第一声。外国選手相手に片足タックルを決めようと思い、片足タックルを課題としてしっかり練習してきたという。「それが出せずに、1点も取れませんでした」と無念の表情。 成田空港にはテレビ局が取材に訪れた
この階級の不動の女王、伊調馨(ALSOK)がヤリギン国際大会(ロシア)で負けた情報が伝わったのは、計量の1時間前。「びっくりした。勝負の厳しさを感じました」と身が引き締まった一方、「自分にもチャンスがあるんだ、という気持ちになりました」と、闘うエネルギーになったようだ。
2010年のクリッパン女子国際大会(スウェーデン)・カデットの部から2012年のゴールデンGP決勝大会(アゼルバイジャン)まで、国際大会を7大会連続で制していた“タイトル・コレクター”だ。しかし、2013年のクリッパン女子国際大会で右ひじを負傷し、手術して戦列を離脱したこともあって、シニアで優勝するのは3年2ヶ月ぶりだった。
「国内で勝てず、国際大会に選ばれるチャンスも少なかったですからね…」と、ブランクを振り返るとともに、「今回、選んでいただいたので、このチャンスを生かしたいと思いました。チャンスを生かせたのは本当によかったです」と話す。久しぶりの国際大会優勝をきっかけに、再び進撃に転じたいところ。
今年の目標は、「まだ全日本選手権で優勝していないので、全日本選手権で優勝すること」。階級は58kg級にするか、これまでの60kg級にするかは、監督やコーチと相談して決めたいそうだが、いずれにせよ、「学生としての最後の年になるので、悔いのない1年にしたい」と、飛躍を誓った。
本来なら前日に帰国の日本協会・福田富昭会長と富山英明常務理事。飛行機が飛ばずに同じ日に帰国となり、最後に選手を激励
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■53kg級・岩群安奈(アイシン・エィ・ダブリュ)「自分の階級より1つ上で、しかも2kgオーバー計量の大会。自分も体を大きくして臨んだのですが、やはり相手は大きく、体力を使ってしまって、ばててしまいました。オリンピックと同じ場所での会場で試合ができるというので、多くの試合をこなしたかったけれど、それができずに悔しい。この経験を今年の活動に生かしたい」
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■63kg級・源平彩南(至学館大)「注意していたことですが、開始早々に飛行機投げにかかってしまいました。そのあと、4点を狙ったタックルを返されてしまった。最初に仕掛けられず、タックルにいって返される…。反省点ばかりです、もっと練習したいです。(シニアの国際大会2大会目で)少しずつ世界の強さがわかってきました」