※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
1936年に創立され、今年で80周年を迎える東日本学生レスリング連盟。オリンピックや世界選手権に出場した男子の大半の選手が、同連盟で汗を流した中で実力をつけ、世界へはばたいた。
節目の年を迎えるにあたり、多賀恒雄会長(明大教)に、今後の活動方針や強化方針を聞いた。(1月11日、東京・味の素トレーニングセンター/聞き手=樋口郁夫)
――東日本学生レスリング連盟は、1936年に関東学生レスリング連盟として発足し、現在に至っている。戦争による中断はあったが、今年が80周年。節目の年への抱負をお願いしたい。
多賀 80周年と言われても、特別なことはない。学生連盟の持っている使命、すなわち学生選手の強化や底辺の拡大といった活動を活発にし、レスリングの発展に寄与できるよう努力を続けるだけだ。 東日本学生連盟・多賀恒雄会長
多賀 過去を見ると、日本が強かった時は学生選手が強かった時だ。そういう意味で、学生選手の強化が必要であることは感じている。ただ、以前と比べると学業優先の学生生活がより強く求められるようになっている等、学生選手を取り巻く環境が変わっている。この点をうまくやり、全日本、さらには世界で活躍できる選手を育てたい。協会と話し合い、学生による合宿を実施することが課題のひとつだ。
■再編が必要な連盟最大のイベント、東日本学生リーグ戦
――東日本学生連盟の活動の一大イベントのリーグ戦についてお聞きしたい。選手不足のため、群馬大、八戸工大に続いて昨年、東農大が出場を断念。今年のリーグ戦は21か22大学となりそうです。この数の中で、一部リーグが16大学、というのはおかしくはないでしょうか。
多賀 再編が必要かもしれない。今年のリーグ戦で、というわけにはいかないので、来年(2017年)に向けて連盟として取り組むべき課題だ。
――いろんな競技の学生の大会を調べてみると、一部リーグというのは6~8大学あたりが普通だ。16大学では、区分けの意味がないように思う。
多賀 大会の内容を充実させるためには、少数精鋭の上位リーグの方が価値が出てくる面はあると思う。ただ、学連の使命のひとつに普及もある。ただでさえ競技人口が少ないうえ、減少している現状では、普及も考えていかなければならない。一部リーグを外れることで、大学から推薦の枠や予算を削られるチームが出てくるのも事実。そのあたりにも配慮しなければならない。
――リーグ戦の一部リーグが16大学から8大学になって、全体で何人の推薦枠が減るというのでしょうか。トータルで4、5人じゃないですか? それだけの競技人口の減少を恐れ、いつまでも今のいびつなリーグ戦を維持していくことは理解できない。
多賀 4、5人ということはないと思う。チームがなくなる可能性もある。それは避けたい。
――二部リーグに落ちることで推薦枠が減らされるなど厳しい状況になるのなら、監督やコーチ、OB会が一丸となって強化し、落ちないための努力をするべきだ。勝負の世界は実力の世界。そんな配慮の必要があるものか…。
多賀 どこかが残れば、どこかが落ちる。たった一度、二部リーグに落ちたことで、廃部の道へ進んでしまう、という可能性も出てくる。それは避けたい。
――その理論で一部リーグの数が増え続け、現在のいびつなリーグ戦になっている。勝負の世界に身を置くなら、負けたら廃部、くらいの覚悟もって臨むべきではないか。
多賀 いびつな形になっているのは確か。普及と強化の両面で最適の方法を模索していきたい。
■主な競技の学生リーグ戦の一部大学数ほか(割合=一部数の全体における割合) | ||||
競技 | 大会名 | 一部 | 加盟数と部数 | |
数 | 割合 | |||
野 球 | 東都大学リーグ戦 | 6大学 | 28・6% | 21大学=4部制 |
首都大学リーグ戦 | 8大学 | 53・3% | 15大学=2部制 | |
サッカー | 関東大学リーグ戦 | 12大学 | 50% | 24大学=2部制 |
ラグビー | 関東大学リーグ戦 | 8大学 | 17・0% | 47大学=6部制 |
関東大学対抗戦 | 8大学 | 50% | 16大学=2部制 | |
バレーボール | 関東学生リーグ戦(男子) | 12大学 | 50% | 24大学=2部制 |
関東学生リーグ戦(女子) | 10大学 | 50% | 20大学=2部制 | |
ハンドボール | 関東学生リーグ戦(男子) | 10大学 | 17・9% | 59大学=7部制 |
関東学生リーグ戦(女子) | 8大学 | 50% | 16大学=2部制 | |
卓 球 | 関東学生リーグ戦(男子) | 8大学 | 9・9% | 81大学=6部制 |
関東学生リーグ戦(女子) | 8大学 | 14・3% | 56大学=5部制 | |
バドミントン | 関東大学リーグ戦(男子) | 6大学 | 5・9% | 102大学=6部制 |
関東大学リーグ戦(女子) | 6大学 | 5・9% | 101大学=6部制 | |
フェンシング | 関東学生リーグ戦(男子) | 6大学 | 31・6% | 19大学=3部制 |
関東学生リーグ戦(女子) | 6大学 | 50% | 12大学=2部制 | |
ボクシング | 関東大学リーグ戦 | 6大学 | 25% | 24大学=5部制 |
レスリング | 東日本学生リーグ戦 | 16大学 | 72・8% | 22大学=2部制 |
■普及の最大の方策はオリンピックでメダルを獲得すること…多賀恒雄会長
――強化と普及は表裏一体だが、一面で相反する面もある。強化には厳しさが必要だが、厳しさだけを求めると辞めていく人が多くなり、普及につながらない。その兼ね合いの難しさは理解できるが…。
多賀 私はそうは思わない、強化することで底辺が増え、底辺が増えることで強くなると思う。これがうまく回っていくことが理想。そういう意味では、普及のための最大の方策はオリンピックでメダルを獲得することだと思う。
――それなら、なおさら一部リーグが16大学もあるのはおかしい。前年の優勝大学と16位の大学とが試合をすることが、強化につながるのか。
多賀 16位の大学にとって、最高の経験ではないか?
――最初から腰が引け、けがしないように闘う、といった事態にしかならない。
多賀 腰が引けないように、と指導することが大切だ。強くなるには、数校だけのリーグ戦ではダメ。多くの大学が参加してのリーグ戦が必要だ。ただ、実力差がありすぎるのは確かに問題だ。そこで2014年にシステムを改め、4大学で予選リーグをやり、各リーグ1位のチームを集めて1~4位決定リーグ、2位のチームを集めて5~8位リーグ……という方式に変えた。一部、二部の区分をなくし、全大学参加の予選リーグ、決勝リーグという方式も一案だ。 昨年のリーグ戦で3連覇を達成し、歓喜の山梨学院大チーム
多賀 リーグ戦のシステムについては検討課題だ。
――私案を述べさせていただきたい。一部リーグを8大学とし、4大学ずつに分けて総当たりリーグ戦を行う。同じ順位同士でファイナルをやってしまうと、全体で4試合(予選3、ファイナル1)しかできないので、リーグ戦のあと、A組1位とB組2位、A組2位とB組1位で準決勝を行い、勝者同士が決勝を闘う、というのはいかがでしょうか。これなら、リーグ戦で1敗しても自力優勝の目があり、選手は最後まで頑張れる。今のシステムは1敗した段階で自力優勝の道がなくなり、選手のモチベーションは明らかに下がっている。
多賀 そういうやり方を含めて検討していきたい。連盟の中でも「今のリーグ区分はおかしい」という意見はある一方、これ以上チーム数が減少することはよくない、という意見も多い。
《続く》=「下」の内容は、リーグ戦の階級、学生の海外遠征、大会日程等