※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 重圧を乗り越えて3連覇の森川海舟(東京・AACC)
キッズ時代には全国少年少女大会で7連覇の偉業。1年生での全中王者こそ逃したが、この大会では1年生から実力を発揮して3連覇。同世代でずば抜けた記録を更新した。
だが森川は、優勝を決めた直後こそ白い歯をこぼしていたが、優勝インタビューでは「試合内容があまりよくなかった。今回の大会で自分の悪いところをたくさん見つけた」と反省の言葉を並べた。
不調は記録の重圧からくる緊張によるものだった。森川は「緊張で自分の動きができなかった。準々決勝は3点しか取れなくて、準決勝では6点も失点しました。予想外のことでした」。3連覇のために努力してきたが、そのプレッシャーに押しつぶされ、ひやりとする場面が多かった。
そのプレッシャーに加えて、今回は減量苦も森川の調子を狂わせた。中学3年間で身長は10cm以上も伸び、今年6月からも一回りほど大きくなった。「これまではほとんど減量がなかったけれど、今回は3、4kgほど。あまり経験がなかったのでしんどかった」と、コンディション作りに苦労した。 必殺技のレパートリーに加わった飛行機投げ
6月の全中ではタックルを中心に攻めて優勝し、「それが自分の形だ」と言っていた。全中2連覇で今回3連覇を狙う森川は、他の選手から追いかけられる的だ。「本当はタックルで攻めたかったけども、相手も研究していた」と、タックルが警戒されているのは計算通り。そこで、タックルに代わる「飛行機投げ」を要所で決められたことは、森川が全中より進化した証だった。
3連覇の重圧を、自分が進化することで乗り越え最高の形で中学最後の試合を終えたが、森川の視線にはすでに高校のステージが見えている。「次の目標はインターハイや国体で通用する選手になりたい」。森川の挑戦はまだまだ続く。