※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫) 3位決定戦の最後、2点を取られて絶体絶命だったが、ここから逆転(赤が土性)
土性は「優勝を目指してきたので、負けた時は落ち込みました」と振り返る一方、「3位に入ればオリンピックが決まるので、気持ちを立て直して(3位決定戦に)臨んだ。絶対に負けられないという気持ちで闘った」と、最低限度の目標を達成してホッとした表情。
3位決定戦は1点を争う接戦の末、ラスト20秒で1点をリードされる窮地へ。しかし、グラウンド状態で体を入れ替えてニアフォールの体勢へもっていき、6-5と逆転する薄氷を踏む思いでの勝利だった。
「攻めなければ、と思っていたけど、攻めることができなかった。最後にポイントを取られた時は、ここで負けたらオリンピックはないと思い、取りに行った」と言う。流れの中で体勢が入れ替わったのではなく、「取れると思って、取りに行った」という自分の意思での逆転のアクションだったという。
登坂と吉田が決勝で見せてくれた粘りに、「パワーをもらった。強い選手を相手に接戦でも勝つ強さを見て、気合が入りました。逆転できたのは、沙保里さんたちがパワーをくえたからだと思います」と言う。
執念の逆転勝ちであり、3年連続のメダルという結果は十分に褒められることと思われるが、「これが今の実力。自分の弱さがあるから金メダルを取れない」と言う。グラウンドで回されたことが多く、その防御や、タックルに入った時の対処など課題が多く見つかったので、「オリンピックへ向けて直していきたい」と話した。
幼い頃から指導を受けた三重・一志ジュニア教室の吉田栄勝さんの教え子としては、まな娘(沙保里)を別にすれば、初のオリンピック出場選手になる。「世界選手権の金メダルを見せることはできなかったけれど、オリンピックの金メダルは必ず見せたい」と、天国の恩師へ誓っていた。