※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫、撮影=矢吹建夫) 両スタイルの最重量級を制した津田大健(中京学院大)
西日本の大学の選手が両スタイルを制覇したのは、は1982・83年に石森宏一(大体大)以来、32年ぶりのこと。東西格差がなかなか解消されない学生レスリング界において、久しぶりに西日本関係者の留飲を下げる結果が出た。
■「西日本の力を見せてやる」と奮起
津田は「大学最後のインカレでの優勝、しかも両スタイル。うれしいです」と第一声。グレコローマンは第一人者の園田新(拓大)が世界選手権にそなえて欠場、フリースタイルは2連覇中のオレッグ・ボルチン(山梨学院大)がひざの手術に踏み切って出場しておらず、「このメンバーの中では自分が優勝するしかないと思った。今はホッとしています」と続けた。
周囲から「優勝できる」と言われてプレッシャーはあったそうだが、「自分が優勝しなかったら、出ていない選手(園田、ボルチン)に失礼だ、と思い、闘志を燃やした」という。勝因は、グレコローマンは「組んでから投げるという自分の武器を慎重に仕掛けて出せたこと」、フリースタイルでは「グレコローマンの闘いだと思って前に出ることを心がけたこと」だったと言う。 開始早々の連続ローリングで優位に立った津田(赤)
先に行われた61kg級決勝で近大の有元伸悟が勝ち、同じ西日本の選手として刺激されたという。「(有元とは)仲がいいんです。続くしかない、と思いました。西日本の力を見せてやるか、と思った」と、同志の活躍も勝因のひとつだったようだ。
■大学王者の先輩を追って、ここまで来た
愛媛・八幡浜工高の出身。愛媛県のレスリングを“後進県”から全国のトップレベルに押し上げた栗本秀樹監督に鍛えられ、全国一こそなかったが、3年生の時(2011年)にインターハイ2位に躍進(決勝の相手は園田新)。
中京学院大でも、2013年JOC杯ジュニア2位、アジア・ジュニア選手権(タイ)銀メダルを経て、西日本学生選手権グレコローマンで2年連続優勝などの実績を挙げた。西日本で表彰台の一番高いところを経験しているわけだが、「全日本学生の日本一は違いますね。しかも両スタイルで…」と、これまでとは違った喜びが気持ちよさそうだ。 秋の決戦を見据える津田大健(赤)
「横井先輩に追いつけ、追い越せ、でここまで来ました。きょうのボクを見て、『あんなふうになりたい』と思ってくれる後輩がいれば、すごくうれしい。そうやって中京が盛り上がり、西日本が盛り上がれば、もっとうれしい」と、西日本の隆盛を望んだ。
卒業後も、環境を求めてレスリングは続ける予定。この優勝は大きなステップになると思われるが、「まだ1番手が残っています」と、秋の2大会(全日本大学選手権、全日本大学グレコローマン選手権)での園田、ボルチンとの闘いを見据える。
「2人とも力がすごいし、テクニックもある。その中で勝つとしたら、組んでから投げること。この技ができるよう、相手にかけるプレッシャー、筋力、組み手など、すべての面で強化していきたい」と言う。
全日本学生連盟の副会長で、西日本学生連盟の菅沼啓安会長は、西日本のチームが2階級で優勝し、両スタイルで3階級を制したことに、「非常にうれしく、いい大会となりました。東日本の強豪大学の指導者が西日本の監督やコーチに就任し、熱心に指導してくれている成果が出たと思う」と振り返る。「これから全日本大学グレコローマン選手権、全日本大学選手権と続きますが、そこでも好成績を残してくれるよう頑張ってほしい」と期待した。