※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=池田安佑美、撮影=矢吹建夫) 2年連続優勝の奥井眞生(国士舘大)
浅井とは昨年の決勝戦でも対戦しており、接戦が予想された。互いに攻めるも得点には結びつかず、30秒ルールによるコーションを取り合って1-1で、後半ラスト30秒を迎えた。規定で負けていたのは奥井だったが、「焦りはなかった。どんな展開になっても確実にやること」と勝機を見出してバックポイント奪うと強烈なローリングを連続で決めて7-1と浅井を突き放した。
昨年覇者の奥井が優勝することは下馬評通りとも言える。だが、トーナメントを制した奥井は満面の笑みを浮かべてインタビューに答えた。「2連覇がうれしいというよりも、去年のインカレで優勝してから1度も優勝できていなかったので、優勝できたことがうれしい。練習の成果が出た」と手放しで喜んだ。
昨年のインカレは奥井のためにあったと言える大会だった。1988年ソウル・オリンピック金メダリストの小林孝至(日大)以来、32年ぶり2人目の快挙といえる1年生両スタイル優勝を成し遂げ、一躍、学生界の看板選手に成りあがった。もはや学生界に敵なしかと思われたが、その後の奥井は思ったような成績を出せなかった。
■JOC杯での屈辱で、原点に戻って自分のレスリングを見つめ直した
学生二冠がかった全日本大学選手権では2回戦敗退。全日本選手権は初戦敗退。今年6月の全日本選抜選手権でも2回戦敗退と、大事な大会では表彰台も逃した。奥井は「インカレ両スタイルで優勝して、気づいていない部分で思い上がっていたり、気のゆるみとかがあったのかもしれない。それでJOC杯では最悪の結果になった」。 1年ぶりの「優勝」を力強くアピール
「(高校生に負けて)落ち込みましたし、全然やる気がでなかった。自分のレスリングができていないと思い悩んだ」―。1年生インカレ優勝から一転、奥井が挫折した瞬間だった。
だがJOC杯の敗戦がきっかけとなり、原点に戻って自分のレスリングを見つめ直した。「プライドとか関係なく、自分のレスリングを確立していこう。自分のレスリングはガツガツ攻める姿勢を見せることではないのか」。
4ヶ月かけて自分らしさを取り戻し、今大会で“奥井ワールド”がさく裂。決勝以外はすべてフォールやテクニカルフォールの圧勝で勝ち抜いた。奥井は「去年のように思い上がらず、また次の大会で勝っていきたい」。次の出番は、地元で行われる和歌山国体。故郷に錦を飾ることはできるだろうか―。