※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
2階級アップでもダントツの優勝! 全日本学生選手権(インカレ)の男子グレコローマン80kg級は、昨年71kg級優勝の屋比久翔平(日体大)が決勝で昨年同級3位の菊本涼馬(国士舘大)をテクニカルフォールで下して優勝した。屋比久は「世界ジュニア選手権(ブラジル)直後で疲れていたけど、勝たないといけない試合だったので、優勝できてよかった」と笑顔で話した。屋比久は今年、大学3年生で最後のジュニア・シーズンだった。世界ジュニア選手権では74kg級で5位。メダルに一歩届かなかったが、「僕の中では(力を)出し切ってきました」と、今ある力をすべてぶつけ、達成感は十分にあったようだ。8月15日にブラジルから帰国し、その2日後には全日本学生選手権の計量へ。世界ジュニア選手権に集中するためインカレを欠場する選択肢もあったが、屋比久は迷わずインカレに出場した。
そこで生きたのが2年前の経験だった。当時1年生だった屋比久は66kg級の選手。今回と同じく8月は世界ジュニア選手権を終えてからインカレというスケジュールだった。「どちらも66kg級でエントリーし、体重で苦労した」と、短期間で66kg級のリミット計量の辛さを忘れることはなかった。
その後、ジュニアでは74kg級、シニアでは75kg級に上げ、ふだんの体重は80kgを超えるほど体が大きくなった。「今後はオリンピック階級の75kg級でやっていくと決めています。体重を増やしているところなので、松本(慎吾)先生と相談し、減量なしで出られる80kg級に挑むことにしました」と、昨年より2階級アップでのエントリーとなった。
■98kg級全日本選抜王者らとの練習が実る
闘う相手は、屋比久よりひと回りも体が大きい選手たちばかり。ブラジルからの移動による時差ぼけもあり、「一昨日は2時間しか寝られなかった。モチベーションやコンディションを整えるのが大変だったが、そんなこと言い訳にしかならない。しっかり勝たないといけないと思った」と、マットに上がると戦闘モード全開。
インカレの優勝という結果に、屋比久は「満足している」と答えたものの、内容に関しては「世界ジュニア選手権に出ていた強い選手は、自分の技をしっかり決める選手が多かった。それなのに自分は、決勝でタックルやリフトが決まらなかったり、中途半端だった。重い階級でもしっかりとリフトを決められるようにならないと」と課題を挙げていた。
8月の連戦を終え、満足いく形でジュニア時代を締めることができた屋比久。来月の国体からは75kg級一本に絞って参戦していく予定だ。「まずは全日本大学グレコローマン選手権で阪部(創=神奈川大、今大会で2連覇を達成)さんに勝てるようにしたい」と目標を掲げたが、視線はその先も見据えていた。
世界ジュニア選手権では世界レスリング連盟(UWW)の公式サイトに屋比久の試合模様がアップされ、さらに四股(しこ)を踏んだだけで会場が沸いたという。大舞台で注目される経験をし、モチベーションも上がった。「ブラジルっていいなと思った。リオデジャネイロ・オリンピックのチャンスが完全に断たれたわけではない。そこを目指して頑張りたい」。ジュニアを卒業した屋比久が一気に75kg級でトップに駆け上がれるか―。