※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
金メダル獲得の松雪泰成(左)と杉馬場曜。中央は岡田洋一監督。
■グレコローマンでの全国一に驚き…74kg級の松雪泰成
74kg級の松雪は全国高校選抜大会も2位で、全国一を目前にしながら2度とも届かなかった。「フリースタイルを中心にしてやっているので、優勝には正直言って驚いています」と、自らの快挙が信じられない様子。
決勝の相手は山梨・韮崎工の林雷。同校にはインターハイのあと練習に出向き、林とも練習して「やられることが多かった」と言う。だが、「この大会でも当たると思っていた」と、やられる中から研究し、勝利につなげることができた。もつれることが多く、スコアはめまぐるしく動いたが、そうした接戦を勝ち抜けたのは「自信になります」と言う。
決勝で闘う松雪泰成(青)
妹の松雪成葉・泰葉(愛知・至学館高)は双子という話題性もあり、2020年東京オリンピックの期待選手としてメディアにも取り上げられている。「成績も妹の方がいい。この優勝で少し追いついたかな」と話した。
■2年5ヶ月のキャリアで全国一…120kg級・杉馬場曜(愛知・星城)
120kg級の杉馬場は「1、2年の時もこの大会に出させてもらっているけど、いい成績を残せなかった。最後の年の大会で優勝できたことは、すごくうれしいです」と手放しの喜びよう。決勝は組み合っての投げが見事に決まってのフォール勝ちだったことも喜びを倍増させているのだろう。「先生(監督)から教えられた通りの投げがしっかりできました」と言う。
準決勝だけポイントを取られており、しかも6失点。「相手は投げの得意な選手。警戒していたのにうまく投げられてしまった。焦った」というが、最後はフォールで勝って地力を見せた。他に、1、2回戦は決めるべきところを決められず時間がかかってしまったそうで、快勝続きの中にも反省点を挙げ、「国体に生かしたい」と言う。
決勝で見事なフォール勝ちの杉馬場曜
■「きつい言葉も言ったが」…岡田洋一監督
岡田洋一監督は2人の優勝選手を輩出に「うれしいです」と感慨無量。松雪は全国大会を2大会連続で2位になっており、卒業までに全国一を経験させてやろうと思っていた選手。しかしグレコローマンはほとんど練習しておらず、「どうかな、と思っていた。意地と気迫でしょうね」と振り返る。
杉馬場は、インターハイの前は不調で「1年生と交代するぞ」とゲキを飛ばしたほどだったという。その“ショック療法”が良かったのか、インターハイでの3位を経て、「今回、意地を見せてくれました」と振り返った。中学時代まで柔道をやっていたとはいえ、特別に強い選手ではなく、柔道のくせがなかなか抜けなかったという。
そのため、かなり厳しい言葉を言ってきた。「帰れ!」は日常茶飯事。つらそうな顔をした時は、「だれに対してその顔を見せているんだ。ここにお母ちゃんはいないぞ。お母ちゃんのとこへ行ってその顔を見せ、よしよししてもらえ」などとも言ったという。
「きつい言葉も言った。でも、最後に優勝できて本当によかった」と声を詰まらせ、「毎日の積み重ねが選手を強くすることを痛感しました」と言う。
2年連続でグレコローマン全国王者を誕生させたが、特別にグレコローマンを中心に練習しているわけではないそうだ。「OBが土日曜日に練習に来てくれ、相手をしてくれている。周囲の人たちに支えられての結果です。感謝しています」と飛躍の要因を分析し、「2人ともまだ国体があります。もう一度優勝できるように頑張らせたい」と期待した。