※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子) 澤葉菜子(愛知・至学館)と栄和人監督(日本協会強化本部長)
今年のインターハイは、男女のユース・オリンピック金メダリストがエントリーしたことが最大の目玉だった。男子は山崎弥十朗(埼玉・埼玉栄)、女子は向田だ。3年になり最後の高校最高峰の舞台で、どれだけのパフォーマンスを出すかが注目された。
その向田に果敢に挑戦したのが、澤だ。「(向田の)いろいろな試合を見て、タックルの入り方を研究しました。アンクルホールドなども強い選手なのでバックを取らせないようにした」と序盤は徹底的にディフェンスにこだわった。
向田にローリングを決める澤=撮影・増渕由気子
向田圧勝という大方の予想を裏切り、2点差のきん差で終盤にさしかかったところ、ついに澤が勝負に出た。至学館仕込みの高速タックルで向田からテークダウンを奪うと、小さい頃から得意だったローリングでさらに2点を追加。4-2と逆転に成功した。
「(向田は)JOCアカデミーの選手で、吉田沙保里選手といい試合をして注目されていた選手でしたから、まさか回せるとは思っていなかった」と、自分の技が通用したことに驚きを隠せない様子だった。
澤はキッズクラブの名門、吹田市民教室出身。高校進学から至学館の門をたたいた。同門には世界レベルの選手がたくさんいる。澤もその環境にもまれて実力を伸ばしたことは言うまでもない。「至学館に来て2年目。度胸はついたと思う」と言う。
決勝の金星だけでなく、トーナメントでも昨年負けた選手にリベンジしたりと、澤にとっては収穫の多いインターハイだった。「来年は2連覇狙いたいです!」。舞鶴インターハイで新しいスターが誕生した。