※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=樋口郁夫) 学校対抗戦、個人戦の楯などと山崎弥十朗(埼玉・埼玉栄)=撮影・増渕由気子
最大の難敵と目された昨年の高校グレコローマン王者の藤井達哉(滋賀・栗東)と5-1だった以外の4試合はテクニカルフォールの圧勝。決勝では、相手を持ち上げて豪快に投げるプロレス技「水車落とし」も披露。他を寄せつけない強さを強烈にアピールした。
学校対抗戦は5試合すべてテクニカルフォール勝ちの圧勝だった。それだけに、準決勝で6分間闘ったことが、周囲には“苦戦”に映る。メディアからもその“苦戦”についての質問がとんだが、山崎は「(相手は)強い選手です。ここ最大のヤマだった。テクニカルフォールでなくてもいいから、落ち着いて自分の動きをやろうと思いました」と、予定通りの試合展開だったことを説明。
「決勝をテクニカルフォールで勝てたので満足です」と振り返り、内容的にも満足な優勝だったことを強調した。
決勝で爆発した豪快な水車落としは、「相手は(体重の)軽い選手なので、倒すより持ち上げる方がいいかな、と思ってやりました。前に落とすより、後ろの方が確実に4点取れると思ったし」とのこと。 決勝でさく裂した水車落とし
■「がむしゃらにやっての優勝」から「周りがよく見えての優勝」へ
昨年の優勝は「がむしゃらにやっての優勝」で、今年は「周りがよく見えての優勝」と言う。以前は、決勝ではすぐに息が上がってしまい、力まかせにいくことが多かったそうだが、「今回はペース配分を考えながら自分のレスリングができた。このあたりに成長を感じます」と自画自賛。ユース・オリンピック王者として周囲からの注目や期待も大きくなったが、「それ(プレッシャー)に勝たなければなりません」と、精神的なたくましさも見せる。
4月のJOC杯ジュニア74kg級で強豪大学生を破って優勝したことが大きな自信になったという。来週は、そのJOC王者としてブラジルで行われる世界ジュニア選手権に挑む。74kg級での出場なので減量しないとならないが、「気持ちを切り替えて挑みます。インターハイが終ったので、今から世界に目を向けます」と、すぐにやってくる国際舞台での決戦を見据えた。
「そのあとは国体で高校最後の大会を締め、12月の全日本選手権です。高谷さん(惣亮=ALSOK)に挑みます。挑んで、どこまでできるか試します」。控えめな言葉だが、その奥には、「来年はリオデジャネイロへ行きます」という言葉が隠れているような気配が感じられた。