※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫) 84kg級優勝の山崎弥十朗(右=埼玉栄)と96kg級優勝の石黒峻士(花咲徳栄)
昨年のインターハイ団体優勝の花咲徳栄と、1月の関東選抜大会で霞ヶ浦と花咲徳栄を破って優勝した埼玉栄は、全国トップレベルでのライバル関係。学校対抗戦は花咲徳栄が準優勝で、埼玉栄がベスト8と差はついてしまったが、個人戦は花咲徳栄が「優勝1人、2位1人、3位1人」で、埼玉栄が「優勝1人、3位2人」と、ほぼ互角の結果を残した。
■山崎弥十朗はグレコローマン王者を下しての優勝
山崎は決勝で同じ関東ブロックの飯村友基(茨城・鹿島学園)相手に、タックルとローリングで攻めて10-0の快勝。「関東予選で闘った時には第1ピリオドで勝っていたので、第1ピリオドで決めたかった」と残念そうな表情を浮かべながら、「みんな強くなっていますから」と話し、満足のいく結果と内容だった様子。 決勝で闘う山崎
ほぼ思った通りの試合運びができたそうで、「スコアは4-1で去年とあまり変わりありませんでしたが、内容的には満足しています。この時点で優勝がぐっと近づきました、まあ、次の川村洋史(静岡・飛龍)も強くて、体力を消耗しましたが…」と振り返った。
昨年の高校三冠王者(全国高校選抜大会、インターハイ、国体)であり、jOC杯カデットを含めれば全国四冠王者。ほかに、ユース・オリンピック優勝、世界カデット選手権3位など、肩書を挙げれば切りがないほど。国内の大会では「勝って当たりまえ」とも思えるが、逆にプレッシャーも感じていた。
「終わってみると、安心(ホッとした気持ち?)が7割、うれしさが3割です」とのこと。“重圧”を乗り越えての今シーズン最初の大会での勝利に、「幸先いいスタートが切れました」とうれしそうに話した。
■石黒峻士も圧勝の優勝飾る 決勝で闘う石黒
昨年のインターハイでは、個人優勝のみならず、学校対抗戦優勝のメンバーでもあった。この大会も、当然、学校対抗戦と個人の両方の優勝が目標だった。学校対抗戦は決勝で無念の黒星。気持ちの切り替えが問題となったが、自身は勝ったこともあり、「悔しかったですけど、比較的スムーズに切り替えられました」と振り返った。
学校対抗戦と個人の全10試合を勝ち抜いたのは立派。それでも、「崩しとタックルがまだよくできない。インターハイまでに、そこをしっかりと直したい」と話した。
■インターハイは県1枠という非情な定め
山崎、石黒、両者とも当然、学校対抗戦と個人の両方でインターハイ優勝を目指している。だが、学校対抗戦に埼玉県から出場できるのは1校だけ。ダブル優勝を目指してインターハイに臨めるのは、どちらか一人だ。それ指摘されると、ともに「そうなんですよね…」と苦笑いし、“困っている”といった表情を浮かべた。
山崎が「花咲徳栄は本当に強い。そこを何とか退け、団体でもインターハイに出たい」と言えば、石黒は「軽量級の頑張りが必要です。一致団結してそこをしっかり強化し、みんなでインターハイに行きたい」と話した。
一昨年は埼玉栄が出場して長崎インターハイでは3位。昨年は花咲徳栄が出場して悲願の初優勝。どちらが出ても、上位進出、いや優勝候補の一角は間違いない。その雌雄が決するのは6月20日。インターハイの前に、埼玉県では47都道府県で最も熱い県予選が待っている。