※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子) 決勝で闘う乙黒拓斗(東京・帝京)
成長期を迎える乙黒は、50kg級から順調に階級アップに成功したかに見えたが、試合前にはアクシデントもあった。「試合前にインフルエンザにかかって、1週間ほど練習を中断せざるを得ませんでした。この試合では、自分のレスリングさえできればいいと思って臨みました」と、55kg級の全国デビューに万全な準備ができていなかった。
階級を上げたばかりで55kg級の力がついていない部分もあり、準々決勝では、同級の国体2位で乙黒も「バランスがよくて安定感がある」と認める永田丈治(青森・八戸工大一)に苦戦。一進一退の攻防で7-5とリードで迎えたものの、試合ブザーとほぼ同時に相手のタックルを受けてテークダウン。一時は、永田の2点が認められ、ラストポイントによって負けという状況だった。 昨年のインターハイに続く全国制覇を成し遂げた
決勝の相手の早山は、乙黒と同じように55kg級の中では長身で手足が長いタイプ。乙黒と体型は似ているが、レスリングのタイプは乙黒と違って踏み込んで差してくるタイプ。乙黒は「普通にやったら勝てる相手」と思ったが、インフルエンザで練習を離脱していたブランクが大きく、大差で勝つことはできなかった。「差してくる相手にてこずった。練習して、次のインターハイで、また勝てるようにしたい」と目標を掲げた。
今シーズン初の全国大会だが、1カ月後には世界カデット選手権予選ともなるJOC杯ジュニアオリンピックがあり、すぐ大事な試合がやってくる。乙黒は「今回の選抜で優勝できたのは自信になりました。JOC杯、インターハイと優勝して、もっと活躍していきたい」と飛躍を誓った。