※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子) 試合を見つめる和歌山北・森下浩監督
地元国体を半年後に控えて強化の真っ最中とはいえ、部員不足で6階級のエントリーが現状だった。森下浩監督は「新3年生が1人だけで、ほかは新2年生。120kg級の選手がいなくて6階級のエントリーで、84kg級も本来は66kg級の選手を起用して闘いました」と苦しい台所事情を吐露した。だが、その84kg級で辻大成が中量級のスピードを駆使して相手を翻ろう。5戦全勝をマークしてチームに大きく貢献した。
昨年の夏はこのメンバーを中心にインターハイのベスト8に食い込み、今回は、それ以上の記録を狙っていた。壁となったのが、東北予選1位の秋田商(秋田)と対戦した初日の2回戦だった。「66kg級の三輪優翔、74kg級の吉田隆起、84kg級の辻の3枚は勝てる計算ができていましたが、問題は50、55、60と軽量級がまだ力不足の状態。120kg級がいないので、3人のうち誰かが勝たなければいけなかったんです」。
森下監督の期待に50kg級の岡本隼人がやってくれた。第1ピリオドのスタートからリードを奪われたものの、2分57秒に逆転フォール勝ちを収め、計算できた“鉄板の3勝”に1勝を加えた。3回戦では和歌山東との県勢対決を制してインターハイに続くベスト8に進出。 中量級を支えた吉田隆起主将
ベスト4に進出しても、選手達の気持ちが満足することはなかった。吉田主将は「去年のインターハイは(優勝した)花咲徳栄(埼玉)に負けましたが、メンバー全員が力の差は思ったより感じなかったんです。また対戦して今度は勝ちたいと思って練習してきました」という強い思いで決勝進出を狙った。
しかし、相手の京都八幡は、軽量級3枚が鉄板の選手をそろえ、66kg級からの4階級で1勝を目指す和歌山北と真逆のチーム編成。さすがに、そのが城を崩すことはできず、50kg級から3連敗したところで120kg級の不戦敗をあわせて敗退が決まってしまった。
森下監督は「京都八幡には力不足で作戦が通用しませんでした」と完敗を認めたが、「一つ一つ階段を上がることができて満足。今回穴となってしまった重量級も、柔道あがりの新入生を確保しているので、インターハイまでになんとか形にできるように仕上げていきたい」と前を向いた。
県勢初の快挙については「国体に向けて、“チーム和歌山”のおかげ。3回戦で県勢同士で闘いましたが、和歌山東の気持ちをプラスして、準々決勝で鹿屋中央を撃破できました」と、国体に向けての県をあげた強化が実ってきたことを実感していた。