※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
園田平(拓大)
昨年10月のターゲット合宿で、久しぶりに味の素トレーニングセンターにその姿があったが、角一哲児トレーナーの指導のもとで筋力トレーニングに終始していた。全日本合宿でマットワークをするのは今回が約1年ぶり。
園田は「この環境に戻らせてもらったことを感謝したい。全日本レベルの選手とスパーリングできる喜びを感じています」と本格的な全日本チーム復帰がうれしそう。復帰戦となるJOC杯ジュニアオリンピック(4月25~26日、神奈川・横浜文化体育館)へ向けて調子を上げていく予定だ。
■絶望的な気持ちを力強く支えた兄・園田新(グレコローマン130kg級)
負傷した昨年のjOC杯決勝、吉川裕介(山梨学院大)戦を振り返る。園田がタックルへ行ったところ、相手がカウンターの投げ。園田のバランスが悪かったようで、右脚に2人の体重がかかってしまい、あってはならない方向に倒れてしまってひざに激痛が走った。担架で運ばれて病院へ。翌日の精密検査の結果、じん帯が切れていることが分かって長期離脱が決まった。 昨年のJOC杯決勝。写真の攻防で長期離脱を余儀なくされた(青が園田、撮影=矢吹建夫)
こうしたケースでは、監督やコーチなど周囲の励ましが選手を支え、復帰を助けたという話はよくある。園田も「多くの人から『焦っても仕方ない』と言われました。気持ちを平静に持ち、着実にリハビリをやってきました」と振り返る。何よりも、グレコローマン130kg級で世界選手権代表を勝ち取るまでに成長していた兄(新=拓大)の存在が大きかった。「焦らずに行け」。幼い頃から面倒を見てきてくれた肉親の言葉は、大きな安心感を与えてくれた。
同期の強豪が世界に飛び立ったり、国内で結果を出すのを横目に、園田は国立スポーツ科学センター(JISS)に通ってリハビリと筋力トレーニングに打ち込む日々が続いた。授業がない時は長期間泊まり込ませてもらってリハビリに専念し、復帰を目指した。「普通では考えられないようなことをしてもらいました」。重量級の貴重な戦力をカムバックさせるため、周囲も最善の努力をした。
■拓大の125kg級にスーパールーキーが加入し、刺激を受ける
筋肉は使わないと退化するもので、例えば足の骨折から復活してみると、左右の筋肉の太さが違っているのが分かる。園田の場合も、手術直後の右脚の筋肉の衰えはすごかったという。しかし、その後のリハビリと筋力トレーニングのおかげで、筋力や体幹は「以前より強くなっていると感じます」とのこと。 全日本合宿で練習する園田平
拓大でマットワークを開始したのは今年に入ってから。当然、最初は怖さがあった。「慣れることで徐々に消えていきました」とは言うものの、全日本合宿となると「無意識にブレーキがかかっています」という状況。高校四冠を制した技術は忘れていなかったが、「技を出すタイミングが戻っていないです」。ブランクは随所にあるのは仕方ない。JOC杯までの約1ヶ月でどこまで回復できるか。
幸い、復活へ向けて好条件はそろっている。この春、拓大には高校の5大大会(園田の制した4大会とJOC杯ジュニア)の120kg級を制した山本泰輝(静岡・飛龍高卒)が加入。格好の練習相手が加わった。「あの体でばんばんタックルに入ってくる。すごい刺激になっています」と、その身体能力のすごさは園田も舌を巻くほど。グレコローマンが中心とはいえ兄もいて、フリースタイルでの相手もしてくれる。
「せっかく拓大に引っ張ってもらったのに、1年間、何もできなかった。今年はしっかり貢献したい。まずJOC杯です。そこで勝って、リーグ戦、インカレ、グレコ選手権と勝って恩返しがしたい」。復帰ロードは、力強く加速を始めた。