※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
工藤佳代子(自衛隊)
軽量級から試合を行うW杯では、重量級は試合の決着がついたあとに闘うこともあるが、チームスコアが接近した状態でマットに上がることの方が多い。重要度は高い。今回、69kg級を任されるのが全日本選手権2位の工藤佳代子(自衛隊)。昨年の東京開催W杯でも同級の2番手代表として参加したが、起用された試合で相手が棄権。闘うことなく終わってしまった。
今回は、不完全燃焼だった昨年のうっぷんを晴らす大会でもある。工藤は「こうしたチャンスをもらえたのはうれしい」と、全日本チャンピオン奪取への足掛かりとしたい気持ちを話した。63kg級時代には2010年サンキスト・オープン(米国)優勝、2012年モンゴル・オープン3位などのメダル獲得があるが、69kg級ではまだ世界の舞台で結果を出していない。今大会では全勝をマークして飛躍を狙う。
■69kg級の土台づくりを終え、今年が勝負の時
工藤は2012年の世界選手権(カナダ)で63kg級の代表となり、5位に入賞。約3ヶ月後にあった全日本選手権で初優勝を遂げ、現役続行が確実視されていた伊調馨(ALSOK)への“第1挑戦者”の位置につけていた。しかし、この時は減量がきつく、「限界だった。特に海外の選手とやる時は力が入らなかった」という状況だった。 昨年12月の全日本選手権で土性沙羅に挑む工藤(撮影=矢吹建夫)
2014年は7月にゴールデンGP決勝大会(アゼルバイジャン)、11月にはビル・ファーレル国際(米国)に出場。後者は5試合を闘って4位に入賞するなど国際舞台で経験を積んだ。12月の全日本選手権は、土性が世界選手権(ウズベキスタン)で負った負傷が完全に癒えていなかった状態だったとはいえ、4-8のスコアまで接近。実力差を縮め、69kg級としての土台作りは終わったと考えていいだろう。
「体力も技術も、すべての面で土性選手には及んでいいないと思う」と、挑戦者であることは忘れていないが、「ロンドンで小原(日登美)さんと米満(達弘)さんが金メダルを取り、(湯元)進一さんが銅メダルを取ったシーンを見て、オリンピックへの気持ちが強くなりました。その目標がやっと見えてきました」と、気持ちが盛り上がっている。
■団体戦での闘いは、選手の実力をアップさせる
今回のW杯では、「外国選手にタックルでポイントを取る」ということが課題。勝てていた時は「タックルがよく決まっていた」とのことで、実戦を通じてレスリングの基本のタックルの再確認をする予定だ。2012年の世界選手権に出場した時より、「間違いなく組み手はうまくなっていると思う」と話し、組みついてくる外国選手相手にも組み手で勝ってタックルを決めたいところだ。 全日本合宿で練習する工藤(撮影=保高幸子)
昨年の大会では土性が72kg級オリンピック・チャンピオンのナタリア・ボロベワ(ロシア)を破る殊勲を挙げ、半年後の世界選手権でもボロベワを破って2位となった。W杯での殊勲が飛躍につながったことは間違いない。「今年は私がそれをやりたい。やってきたことを出し切ることです」と表情を引き締めた。
6月の全日本選抜選手権をリオデジャネイロ・オリンピックへの「ラストチャンス」と表現した。土性を世界選手権(米国)に行かせたなら間違いなくメダルを取ると思っており、日本代表選考規定によって、その段階でオリンピック代表が実質的に内定するからだ。
残された期間は少ない。そのためにもこのW杯が大きな意味を占める。同学年の鈴木博恵(75kg級=クリナップ)が主将で、工藤が副主将。「博恵ちゃんと一緒にチームを盛り上げ、頑張ってきます」と話し、チームリーダーの自覚を持って世界へ挑む。