※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫)
初の全日本選手権優勝を遂げ、応援席にアピールする高谷
決勝は、66㎏級から階級を上げてきた小島豪臣(K-POWERS)を相手に、2ピリオドともクリンチ勝負を制して初優勝を遂げた。
■優勝後の第一声は、「ただいま」
優勝後のインタビューでは、高谷は大勢の報道陣に向かって開口一番、「まず、ただいまと言いたい」と笑顔でコメント。高谷の言葉通り、テレビ・クルーに囲まれた公式会見場に姿を現したのは4年前に2位に入って以来のこと。しかも、前回は大健闘の2位で注目だったが、今回は堂々のチャンピオンとしての登場だ。
大学では、全日本学生選手権を2年から3連覇、秋の全日本大学選手権では4連覇し、専門のフリースタイル74㎏級で学生に喫した黒星はわずか1敗と学生ではやはりずば抜けた成績を残した。しかし全日本の舞台では2位が最高成績で、高谷自身も周囲も今回の優勝が待ちに待ったという感じだ。
対戦成績が全敗の鈴木崇之(警視庁)が初戦で敗退し、高谷に追い風が吹いたように見えたが、決勝は予測不可能なカードとなった。66㎏級から階級を上げてきた小島は、初戦で今年の世界選手権代表の高橋龍太(自衛隊)、74㎏級でコンスタントに表彰台に上がってきた奈良部義嘉(山梨学院大ク)を破るなどし、決勝までの3試合をすべてストレートで勝ち上がってきた選手。
第2ピリオドはクリンチの防御を切り、守った
66㎏級では減量との闘いがあった小島だが、74kg級では一転してマット内を縦横無尽に動き回る高速レスリングにスタイルチェンジ。“タックル王子”の異名を取る高谷に対しても、タックルの手数は小島が多かった。
2ピリオドともにクリンチになってしまったが、優先権はそれぞれ1つずつで五分の条件だった。高谷は第2ピリオドのクリンチの防御をしのぎ、2ピリオドを連取した。高谷が「尊敬する選手」という小島との初対決は、快勝といかなかったが、これでロンドン五輪への道が開けることになった。
北京五輪予選の時は海外経験がほとんどない状況だったが、その後、世界ジュニア選手権や世界学生選手権など海外遠征を多くこなしている。4年前とは違う姿を五輪予選で見せられるか-。