※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=保高幸子) 「フォックスキャッチャー」の感想を話す吉田沙保里(ALSOK)と栄和人強化委員長
「フォックスキャッチャー」は20年前に起きた事件を元に制作された映画で、「カポーティ」「マネーボール」のベネット・ミラー監督の作品。制作段階から賞レースの主役になるだろうと注目を浴びていた。
舞台は1988年ソウル・オリンピック前から1996年アトランタ・オリンピック前後の米国。1984年ロサンゼルス・オリンピックのフリースタイル82kg級金メダリストのマーク・シュルツ(チャニング・テイタム)は、栄光の反面、資金難に陥っていた。そこへ、デュポン社の御曹司ジョン・デュポン(スティーヴ・カレル)率いるチーム「フォックスキャッチャー」にスカウトされ、潤沢な資金の元でソウル・オリンピックでの金メダル獲得を目指していた。
しかし、次第にデュポンの秘めた狂気が暴走しはじめ、兄で1984年ロサンゼルス・オリンピックのフリースタイル74kg級金メダリストのデーブ・シュルツ(マーク・ラファロ)がコーチとして加わると、デュポンの嫉妬によって三者の関係が破綻。悲劇の結末へと続く。
デュポン社はテフロンなどで知られるアメリカ三大財閥の一つ。この事件は当時の米国で世間を戦慄させた。映画では、謎に満ちた事件の深層に切り込んでいる。 レスリング界の皆さん、ぜひ映画館へ!
また、「(メイクによって)レスラー耳もあったし、レスリングシーンも本格的だったので驚きました!」と話し、レスラー視点での描写も文句なしの様子。「ふだんは後輩と恋愛映画を見ることはありますが、今回こういうチャンスがあってこの映画を見られて良かったです。主人公の心の動きも同じレスラーとして素晴らしいなと思いました」と、映画の新しい楽しみ方も発見できたという。
また新海真美(アイシン・エィ・ダブリュ)、桜井宏美(ランクアップ平野屋)、村田夏南子(日大)は口々に「みんなであれはどういう意味だったのかと、あとから話が弾みました」「みんなで話しながら、あぁ、あれはそういう意味だったんだ! とわかった場面が多いです」「謎めいていました。もう一度見たい」と話し、衝撃を隠し切れない様子だった。
栄和人強化委員長は「デーブとは知り合いで、事件を聞いた時は信じられなかった。偉大な金メダリストを失ったのはレスリング界にとって大きな損失だった。映画化して多くの人に知ってもらうことは必要なこと」と、シュルツ兄弟と同時代を選手として過ごした実感を込めた感想を述べた。
「フォックスキャッチャー」は、来月22日に発表されるアカデミー賞の監督賞、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされている。レスリング関係者必見の映画と言えそうだ。
【予告動画】