※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 世界選手権5位の高橋侑希を破って3連覇の森下史崇(ぼてぢゅう&Bum’s)
今大会、同級はロンドン・オリンピック男子55kg級3位の湯元進一(自衛隊)が復帰することで注目されていた。だが、湯元は1回戦で高橋に敗退。決勝は全日本選抜選手権と同じ顔合わせになった。
高橋との決勝戦は半年前のリベンジ戦だった。6月の全日本選抜選手権の決勝で、森下がタックルで獲得したと思われた4点が、チャレンジ(ビデオ・チェック要求)によって高橋の返し技4点に覆って形勢は逆転。そのまま試合終了となり、プレーオフも敗れて2連敗。森下は昨年の全日本選手権で優勝したアドバンテージを生かせずに終わった。
微妙な判定で賛否両論の意見が出たが、審判が下した判定だから負けは負け。だからこそ「前みたいにもつれてしまうと、どっちに転ぶか分からない。誰が見ても自分の点数だというレスリングを心掛けた」と技の完ぺきさを意識して闘った。 ラスト10秒、大内刈りで逆転優勝の森下
大会を通してみると初戦(2回戦)で対戦した高校生の藤田雄大(三重・いなべ総合学園高)に不用意に差されて一本背負いで4失点。3回戦では学生二冠王者(全日本学生選手権、全日本大学選手権)の中村倫也(専大)にも4-2と接戦をしてしまい、王者らしいワンサイドゲームを演じたのは準決勝だけ。
高橋が初戦で湯元、2回戦でスーパールーキーの樋口黎(日体大)と対戦したのに比べると、恵まれた組み合わせだった。にもかかわらず、思ったより苦戦した。「3連覇できたけど、組み合わせが変われば結果も変わると思うので、油断せずに頑張っていきたい」と、ベテランの復帰や若手の成長に気を引き締める内容だった。
今年はアジア大会代表になったものの、プレーオフで敗れて2番手としての代表入りだった。来年のビッグマッチは世界選手権(米国)のみ。ナンバーワンにならなければ派遣されることはあるまい。「来年の明治杯(全日本選抜選手権)こそストレートで決めたいと思います」と、来年こそ初の世界選手権代表入りを熱望した。