2014.12.03

「ブラジルカップ」出場の日本チームが帰国

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

男子のメダル獲得選手

 ブラジル・リオデジャネイロで行われた「ブラジルカップ」に参加した若手主体のチームが12月2日、羽田空港着のルフトハンザ航空で帰国した。チームは大会前に参加国の選手で行われた合同合宿に参加したあと、大会に出場した。

 男子グレコローマンは「金5・銀1・銅2」の成績で、全員がメダルを獲得したが、南米のグレコローマンは発展途上であるため、欧州で行われる多国籍合宿や大会ほどのハイレベルの内容ではなかったという。

 それでも、59kg級のエクアドル選手は9月の世界選手権(ウズベキスタン)で倉本一真(自衛隊)と2-2の接戦を展開した選手(ラストポイントで倉本の勝ち)。ところどころに好選手がいたという。西口茂樹監督(拓大教)は「弱い選手でも、平均してパワーは強く、戸惑っていた選手もいた」と、パワーのある選手相手の闘いを経験できたメリットを挙げた。

 一方、「弱い相手に合わせたり、慎重になってしまい、だれが相手でも自分のレスリングをやる、という基本ができていない選手が多い。先に2コーションを取って安心してしまい、攻めることをしないで負けてしまった選手もいた」という苦言も呈した。

 また、130kg級から98kg級に落として最初の大会となった前川勝利(早大)は、今年の欧州選手権3位のスウェーデン選手相手に「引けを取らない試合内容を見せてくれた」と評価。同級の日本代表争いが激しくなりそうな予感を口にした。

■オリンピック開催地を視察できたメリット

 男子フリースタイルは「銀2・銅2」で優勝はなし。和田貴広監督(国士舘大教)は「アメリカは若手、ロシアは3番手か4番手が中心で、決して高いレベルではなかったにもかかわらず、優勝がなかったのは物足りない。ジュニア主体のチームだったので、経験が足りなかった、という印象です」と総括。

 ブラジル、ペルー、エクアドルといった南米の選手には勝てても、米国やロシアの選手が相手だと、それを超えるだけのものを持っていないという。「場なれしていない、という面もあると思うが、攻撃してもポイントへつなげられない、脚をキャッチしてもテークダウンまで持って行けない。技術面の課題もある。コンタクトしてからの攻撃が弱い」と厳しく評した。

女子のメダル獲得選手

 74kg級には70kg級の世界チャンピオン(ヘティク・ツァボロフ=ロシア)が出場しており、奥井眞生(国士舘大)が決勝で対戦。「いい経験になった」というプラスもあった。

 「金3・銀1・銅1」の成績を残した女子の木名瀬重夫監督(日本協会専任コーチ)は「決して低くないレベルの中で、これだけの成績を残したことは評価したい」と振り返る。合宿でのスパーリングでは1点も取れなかった相手に試合では勝ったというケースもあり、練習で見つかった課題をすぐに克服した選手もいて、その頑張りを評価した。

 「合宿をやってから大会、という遠征はいいですね。外国選手と練習すると気持ちが燃え上がり、その気持ちで試合に臨めるメリットがあります」と、今後は「合宿~大会」という遠征を取り入れていきたいという。

 3人の監督とも、オリンピック開催の地をひと足先に訪れることができたメリットは口にした。試合会場はまだ鉄骨の状態だったそうだが、選手村や支援役員の予定宿舎などを見学。コンパクトにまとまっていて、環境はよく、「選手村~試合会場までの距離を体感できたことはよかった」(和田監督)。

 24時間をかけての移動については、3人の監督のみならず、選手も「思ったほど大変ではなかった」と口をそろえる。ドイツ・フランクフルト~リオデジャネイロ間の飛行機には日本語の映画の上映もあったそうで、「あっという間に時間がすぎ、ひまつぶしにはよかった」(木名瀬監督)。

 ただ、「最初は時差ぼけがひどく、力が入らなかった。3日くらいで慣れた」(男子グレコローマン59kg級・太田忍)という声もあり、多くの発見のあった遠征となった。


 ■男子グレコローマン59kg級優勝・太田忍主将(日体大)の話「レベルはあまり高い大会ではありませんでしたが、リオデジャネイロで試合をやって勝てたことはよかったです。(倉本一真が世界選手権で2-2の)エクアドル選手にテクニカルフォールできたのは自信になります。南米の選手は無理な体勢からでも技をかけてくるので、戸惑った部分もありました。チーム全員がメダルを取れたのはよかったですが、あまりレベルの高い大会ではなかったので、全員優勝でなければならなかったと思う」

男子フリースタイルと女子のキャプテンを務めた田中幸太郎・亜里沙の兄妹。2人そろって遠征に参加したのは初めてという。

 ■男子フリースタイル65kg級3位・田中幸太郎主将(阪神酒販)の話「全日本選手権前の遠征。自分にとってはまだ(調整ではなく)強化の時期なので参加しました。3位では満足できませんが、新たな課題が見つかり、全日本選手権前にこうした経験ができたことはよかったと思います。フリースタイルで優勝がなかったのは残念ですが、ロシア選手と互角近く闘った選手もいて、みんないい経験ができたと思います」

 ■女子53kg級優勝・田中亜里沙主将(早大)の話「国際ではいつも一発技にかかったり、ミスで負けていたので、優勝できて素直にうれしい。まだ課題が多い内容ですが、成長を感じてもいいかな、と思っています。全日本選手権までに今回見つかった課題に取り組んでいきたい。チーム全員の意識が高く、だれもがコーチの指導をしっかり吸収できたと思います。全日本選手権へ向け、全員がこの経験を生かして頑張りたい」