2014.12.01

【西日本学生秋季リーグ戦・特集】二部落ちの屈辱をばねに、同志社大が49季ぶりの栄冠

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 一昨年の西日本学生秋季リーグ戦で、創部67年目にして初めて二部落ちの屈辱を味わった同志社大が、昨年秋季に素早い一部復帰を果たし、今大会で一気に優勝の栄冠を勝ち取った。1990年春季以来の優勝で、49季ぶりの西日本の頂点。

 8季ぶりの優勝を目指す立命館大との決勝は、チームスコア3-3となり、86kg級の試合で優勝が決まる状況となった。同志社大の選手は榎本凌大。埼玉・花咲徳栄高から同志社へ進んだ選手で、2年生にして10月の西日本学生選手権両スタイルを制覇した実力者。同志社大優勝の期待は高まった。

 榎本は第1ピリオドのフォールで勝利をおさめ、チームの期待にこたえた。その瞬間、同志社大のベンチと応援席の歓喜が爆発。喜びの洪水の中で、前田喜代範監督、三村和人コーチ、福田耕治総監督の体が宙を舞った。

■決勝戦・試合結果 
階級 同志社大 試合結果 立命館大
70 和智健悟 Tフォール、10-0   加藤秀麿
125 須賀昭王 Tフォール、11-0   平田翔
61 矢倉明佳   Tフォール、0-10 岡澤澄
65 光永賢弘 Tフォール、9-1   島村太朗
74 平野翼   1-5 古澤宏野
57 羽田圭佑   Tフォール、0-11 中村弦斗
86 榎本凌太 フォール、2-0   藤田真士

 前田監督は「うれしい。選手の練習の賜物だと思います。まだ至らないところばかりですが、これを機に常に勝てるチームを目指したい」と喜びの声。「優勝の原動力」を問われると、「選手の『勝ちたい』という気持ちです」と即答。選手の優勝への強い気持ちが、栄冠を引き寄せたことを強調した。

 ただ、「勢いで勝った部分が大きい。地力ではよその大学より劣っていると思う。この優勝でいい気になっていたら、すぐに落ちてしまう」とも話し、「今後も地道な努力を続けていきたい」とも話した。

■二部落ちを機に、OBと現役が一致団結

 2年前に二部に落ちたことをきっかけに、それまで現役選手にあまりかかわっていなかったOBによる支援が始まったという。練習に来てくれるOBの数が増え、平日でも勤務が休みのOBが来るようになった。

 「OBと現役が一丸となっての結果だと思う」と話すのは、三村和人コーチ。「今まではOBが現役選手に任せっ切りで、『自主性』という言葉にあぐらをかき、支援がなかった。二部落ちのあと、OBが練習だけでなく、スカウトなどでもサポートするようになった」と振り返る。

 OBがほとんどかかわっていないチームでは、OBであっても敷居は高く感じるもの。逆に、多くのOBが頻繁に顔を出していることを知れば、OBも足が向くようになる。 “倍々ゲーム”という感じでOBの支援が強くなったという。

 来年は創部70年目の節目の年となり、2月には盛大なパーティーが予定されている。タイミングよくリーグ戦優勝を成し遂げたわけで、「優勝&創部70年」という相乗効果で、OBからの支援がさらに強くなりそう。三村コーチは「来年は、もっといい選手(インターハイ王者)が入ってきます。伝統復活のいいきっかけができましたね」と期待する。

 2年前、勝利の女神は、長い歴史と伝統を持ちながら優勝戦線に復活してこない同志社大に、「二部落ち」という荒治療を試みた。この試練に負けてしまうようなら、二度と手を差し伸べることはなかっただろう。

 同志社大はこの試練を真っ向から受け止め、OBと現役の団結によって強大なチームに生まれ変わった。70年の伝統をベースに、優勝を目指して努力を続けた同志社大選手を、勝利の女神はしっかりと見守っていた。