2014.11.29

【東日本学生秋季新人選手権・特集】グレコローマンに活路を見出した高校四冠王者、焦らずに世界を目指す…75kg級(85kg級優勝)・武田光司(専大)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 東日本学生秋季新人選手権のグレコローマン85kg級は、昨年の高校四冠王者、武田光司(専大=埼玉・埼玉栄高卒)が春季の75kg級に続いて優勝。80kg級を飛び越して、1年生にして2階級制覇を達成した。

 準決勝までの3試合はいずれもフォール勝ち。決勝は春季80kg級優勝の東桂佑(神奈川大)が相手で、苦しい場面もあったが4-1で勝利。春の王者同士の闘いを制した。武田は「(本来より)2階級上だったの優勝できるかどうかは分からなかった。体格差を気持ちでカバーできたかな、という感じです。優勝できてホッとしています」と2階級制覇の感想。

 準決勝までの3試合を「グレコローマンの技術は未熟ですが、自分の持ち味である前へ出るレスリングをやっていたら、相手がばててくれ、自分のペースに持ち込めました」と振り返り、決勝は「自分とは相性がいいタイプ。やりやすい面はありました」と、多少苦戦はしても、最後には勝てると信じていたようだ。

■先輩の進言がきっかけで、グレコローマン転向を決意

 昨年のインターハイ王者で、大学ではフリースタイルを中心にやることが予想された。進学後の最初の大会であるJOC杯はフリースタイルに出場(3回戦敗退)。春季新人選手権は両スタイルで優勝しており、フリースタイルに役立たせるためにグレコローマンにも取り組んでいると考えられた。

 ところが、専大の先輩の魚住彰吾選手(3年=全日本大学グレコローマン選手権3位)から「グレコローマンの方が向いているのでは」と言われ、練習していたら、「グレコローマンの方が楽しく、やりがいがあるように感じてきた」と、その魅力に引きつけられた。今後の闘いの中心はグレコローマンになるとのことだ。

 2階級上に出場した理由は「特にないです」。試練を求めての力試しや、減量のない状況で思い切って闘うためなどの理由が考えられるが、「本当に理由はないんです」と笑う。昨年も、74kg級の選手ながらチーム事情で84kg級に出場し、4つの全国大会を制している。上の階級に出場することに、さほど抵抗はなかったのかもしれない。

 ただ、自分の体重より重い選手との試合が続き、体力的にハードな闘いになることが予想されたので、大会の前半に行われたフリースタイルには出場せず、グレコローマンの試合にそなえた。グレコローマンにかける気持ちが、優勝を呼び寄せたのかもしれない。

■全日本選手権で世界5位やアジア2位に挑む!

 もちろん、全日本はおろか学生のトップともまだ大きな差があることは十分に承知している。8月の全日本学生選手権75kg級では、優勝した阪部創(神奈川大)に1点も取れずに完敗。阪部とは国体決勝でも闘い、0-9のテクニカルフォール負けを喫している。

 「技術すべてが違った。自分の知らない試合展開もしてこられた。強すぎます」。学生王者相手でも大きな差を見せつけられたのだから、さらに上を目指すには厳しい試練が待っていることを覚悟している。

 それでも、来月の全日本選手権では世界5位の清水博之(自衛隊)やアジア大会2位の金久保武大(ALSOK)らと闘うことに胸を躍らせている。「今の段階でかなう相手ではないですが、自分の力がどこまで通用するかやってみたい」と対戦を待ち望む。「前へ出るだけでなく、崩しや腕取りで攻める展開ができるよう、あと1ヶ月を頑張りたい」と、技術面での課題を挙げた。

 昨年、高校レスリング界を熱く燃やした強豪の一人。その強豪の中で、奥井眞生(和歌山・和歌山工高~国士舘大)と白井勝太(東京・帝京~日大)が1年生で学生のタイトルを獲得し、他の選手も2020年東京オリンピックへ向けてのターゲット選手に選ばれているのに対し、武田はJOC杯での3回戦敗退のせいか、選ばれなかった。

 しかし、焦りはない。「周りが結果を出しても、自分は焦ることなくやっていこうと思っていました。嫉妬する部分はあるかもしれませんが、焦っても、何も始まらない。焦らずにやります」と、他の選手との競争ではなく、着実に実力をつけていく腹積もりだ。

 グレコローマンに活路を見出した武田が、新人選手権2階級制覇を足掛かりに新たな飛躍を目指す。